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狼狽えることを判っていて、仕掛けてきていのでタチが悪いが、渉太が冷静になれる訳もなく……。ここに来ても尚、まんまと律仁さんに躍らされてる。
「そ、それはっ。いくら何でも反則です。こんな格好良い姿で言われたら誰だってっっ……」
反論して言い終わらないうちに、追い討ちを掛けるかのように額に口付けをされて、更に渉太を困惑させられた。
直ぐに離れては微笑まれたものの、律仁さんが触れてきた余韻を追うのように両手で額を抑える。
「律仁さん、これ以上はやめてくださいっ」
胸の鼓動が早くなって、顔全体が熱い。
真夏でもないのに身体が火照って、汗が項に伝う感覚を覚える。
「相変わらず渉太の反応、可愛いなー。でも今のは流石にくさかったね。なんかヘアメイクセットしちゃうと自然とスイッチ入っちゃってさ、でもたまには良いかも」
反省するどころか、味を占めたようにアイドル顔で悪戯に笑う律仁さんに渉太はタジタジだった。
「俺の心臓がもたないので勘弁してほしいですっ……」
「それは残念だなーでもちょっとだけ、この姿でイチャイチャできんの早々ないと思うんだけど?」
ファンが羨むようなシュチュエーションを簡単に俺に仕掛けてくる律仁さん。
真剣な表情で見つめられ、顔が徐々に近づいてくる。
罪悪感はあるけど、キスくらいならと思って律仁さんに押されるままに渉太は抵抗しなかった。
あと数センチの所でドアがノックされては部屋の扉が開かれる。自然と音に反応して離れるが、控え室に入ってきた人物を見た瞬間に血の気が引いた。
「最悪」
律とは正反対に黒いジャケットを着て、ヘアメイクを済ませた藤咲が睨むようにして渉太を見てきていた。
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