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藤咲との蟠りを溶かすどころか、本音すら聞けぬまま撮影時間を迎え、今に至る。 撮影場所には律が居て、その周りをスタイリストさんやカメラマンさん、沢山の人と機材が囲う。 離れたところから、様子を伺っては遠くから見惚れてしまうほどの律の格好良さに魅力されていると、隣から咳払いが聴こえてきて、自然と背筋が正された。 明らかに咳払いの根源は隣の吉澤《よしざわ》さんだった。 厳しい顔つきで両腕を組み、仁王立ちで前を見据えているからか、余計に話し掛けにくそうな印象を持っている。 一緒に挨拶周りをした時も、特に誰だとか教えられるのでもなく唯、金魚の糞のようについて行っただけ。今のところ真面に会話を交わしてはいなかった。 律仁さんみたいに初対面でも相当砕けて会話をすることができる人じゃないと絶対無理。 「いつからだ?」 「えっ……?」 今日一日この人と雑談をするこはないと思っていただけに、急に問いかけれて思わず聞き返してしまった。 その事に少し苛立ったせてしまったのか「君と律がそういう仲になったのはいつからだ」と強めに言い直されて渉太はその勢いに縮み上がると思わず「すみません」と謝ってしまった。 「今年の春頃からです。りつひ…律さんと……」 「わかるから律仁でいいよ。俺は仕事上、あいつが律で呼ばれることが多いから呼んでるだけだ」 「律仁さんと出会ったのはもっと前からで……長山先輩がいたサークルに僕もいて、その飲み会に律仁さんが来てたのがきっかけです」 律仁さんと出会った経緯を軽く話すと吉澤さんは「大樹か……」と何か心当たりがあるのか意味深に呟いた。確か律仁さんの話では大樹先輩のマネージャーもやっていたとか聞いていた。 今でも関わりがあるんだろうか……。 渉太は吉澤さんの反応を待ってみたが呟いただけで、先がない。 やはり、今回のことといい、俺が律仁さんと付き合うことをあまり良くは思っていないのだろうか。 「あの……俺と律仁さんがそういう関係でいるの……吉澤さんはどう思いますか?」 途端に吉澤さんとの間が不安になった渉太は、沈黙したままの吉澤さんに問いかける。 自分の気持ちを優先して選んだ道。堂々としていればいいものの、第三者の意見は気になっていた。少なくとも世間一般的に受け入れられやすい男女の交際ではないと自覚はしているから……。

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