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「プライベートは本人に任せてるし、この業界では同性同士なんて珍しいもんでもない。正直こないだみたいに週刊誌にすっぱ抜かれるのは勘弁して欲しいが……まぁ撮られたら撮られたで仕方ないしな」 色んな人を見てきたであろう吉澤さんの話はやけに説得力があって、自分の周りには同じ嗜好の人なんていなかったから、何も変わったことではないんだと、少し安堵したと同時にこんな自分をすんなり受け入れて、「人として好き」だと言ってくれた律仁さんに納得もする。 「法に触れることじゃなければ、あいつが君と付き合おうが、恋人に晒されようが真面に受けた仕事をこなしてくれたらそれでいい」 吉澤さんは「タレントを守るのが最優先だしな」なんて呟いては律仁さんを慈愛したよな眼差しで眺めていた。 律仁さんは車内で散々吉澤さんのことを頭が固いなどと愚痴を漏らしていた。自分も初対面にあった時、吉澤さんのことは規律が厳しい人なのかと思ったが、案外そうでもないような気がする。 じゃなきゃ最終的に俺が現場についてくることも許してくれないと思うから……。 吉澤さんに見せていた姿といい、親子みたいなそんな信頼関係を渉太は感じていた。 「君は真面目だな」 「えっ……そんなこと無いです」 「普通、ただの見学者なのに自ら一緒に挨拶周りなんて、ついていこうなんて思わないだろ」 皆が動き回っている中で、新人マネージャーってことになっているのに一人だけ控え室の中の律の傍で立ち尽くしてるのも落ち着かなかった。 それに、メイクをされながら真剣に仕事のおさらいをしている律仁さんの邪魔はしたくなかったから……。 だけど、吉澤さんからしたら迷惑だったかもしれない……。 「すみません、迷惑でしたか?」 「いや、別に構わない。むしろ関心するよ」 関心されるに値したことはしていないのに、他の人から褒められのは妙に恥ずかしくて、肩が竦む。

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