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確かに幾ら、好意的に思っていない相手とはいえども、ただ手が触れ合っただけなのに、あそこまでの過剰な反応はしない。 律仁さんのことも心配だけど、つい最近似たような場面を起こした既視感からか、渉太の目線は自然と下がっていた。 ここでずっと立ち話をしている訳にもいかず、吉澤さんに促されて渉太たちも控え室に戻ることにした。途中で吉澤さんは「車を出してくる」と言って、先に外に出て駐車場へと向かっていった。 律仁さんと二人きりの控え室。 律仁さんは室内に入ると、真っ先に着替え用のカーテン間仕切りの中に入って行った。 「渉太、さっきの演奏どうだった?」 「あっ、えっ……」 律仁さんを待っている間、壁に寄りかかり、 今日のことをぼーっと考え事をしていたら、 カーテン越しに声を掛けられて、狼狽える。 渉太は咄嗟に 先程の律仁さんと藤咲のピアノを思い返した。 「新鮮でした。ギターはテレビで見た事あったけど、ピアノを弾いてる姿は初めてだったので……律仁さんが弾けたなんて知らなかった……」 冒頭の演奏だけでも、ピアノサウンドに重みが増して楽曲の世界に惹き込まれそうになっていたのに、フルで聞けたら暫く余韻に浸れそうなくらいだった。 「でしょ?って言ってもやっぱり突発的は難しいね。俺もピアノは個人的に練習しただけだし、今回は歌とピアノだから機会があったら尚弥くんと弾けたら面白そうだなーって思ってはいるんだけどね」 「それは凄い見てみたいです……」 冒頭の演奏だけでも、ピアノサウンドに重みが増して楽曲の世界に惹き込まれそうになっていたのに、フルで聞けたら暫く余韻に浸れそうなくらいだった。 それに得意げに話す律仁さんが楽しそうで、ただ、一緒に仕事する相手とはいえ、ピアノまで練習して、次のことまで考えているなんて、心底藤咲を嫌っている訳じゃないと分かって安堵した。

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