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藤咲と別れて道に迷っていたところ、途中で場内スタッフに案内されながらも、何とか1階の関係者席までたどり着くことができた。
向かいの座席列やアリーナ、2階と場内全体を彩るペンライトが綺麗で、初めて目の当たりにする光景に渉太の気持ちも高揚する。
そんな総立ちで律を眺めている周りの座席とは一変して明かりのない一角が雰囲気を漂わせている関係者の座席に緊張を覚えながらも、中腰で座席の横を通り過ぎり、大樹先輩の真横に座ると一息ついた。
どうやら間に合ったらしくて安堵する。
隣に座るなり先輩に心配そうに小声で「大丈夫だったのか?」と囁かれて「大丈夫です。藤咲くんちゃんと連れ戻してきました」と報告すると、ステージに集中した。会場内は既に最高潮なのか、周りの熱気を感じる。
メインステージのセンターでスタンドマイクを撫でるように持ちながら歌ってるをハッキリと見ることができた。白いタンクトップに寒色のシャツをはだけさせながら歌うだけで客席黄色い歓声が大きくなる。
普段の倍以上に色気のあるダンスとパフォーマンスにドキドキしながらも、渉太は目が離せないくらいに心奪われていた。
曲が終わり、数秒照明が真っ暗になったあとパッと客席が見渡せるくらいに明るくなる。
律がマイクを持ち、「えーそろそろ終わりに近くなってきました」と客席に話しかけ始めた。客席の「えー、いやだー」なんて声が各場所で聞こえてきては、律はハニカミ笑顔を見せる。
「今日は来てくれてありがとう。10周年という大きな節目でこうやってファンの方々に恩返し出来たこと嬉しく思います」
駄々を捏ねるようなレスポンスを送るファンをあやす様に、手で鎮める動作をしながら、会場のざわめきが収まったところで、律が真面目な表情をしながら、ひとつひとつ言葉を紡ぎだしていた。
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