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大晦日の特番と律仁さん④
「そんな寂しいこと言わないでよ。大きい会場で歌ってたらさ、渉太に会いたくてたまらなくなったから迎えに来たんじゃん。それに、番組終わってアイドル終わりたてホヤホヤの俺がここに居るじゃん?今ここにいる俺を見て?」
今自分はここまで恋人に溺愛されて気持ち悪い程ニヤケている自信があるが、律仁さんのペースに流されてはいけない。
接近してくる顔に、内心では心臓がバクバクではあったが、キスをされそうな気配を感じて四本の手の指を律仁さんの唇に当てて阻止をした。
「そ、そ、そ、そうやって、キスで誤魔化さないでください」
律仁さんは一瞬だけ眉間に皺を寄せると、俺の抑えていた手首を掴んで来ては人差し指を咥えてきた。
「まら、らめぇ?」
俺の指を咥えながら眼鏡の奥の上目遣いでキスを強請ってくる律仁さんに、魂が抜けそうなほど頭が蒸発寸前だった。
このままお強請り律仁さんに甘んじてキスをしてしまったら、止まらなくなってしまう気がする。冬場とは言え、バイト終わりで汗はかいているだろし、まだお風呂に入っていない。
それに、もし最後までするんだったら準備だって出来ていなかった。
「だ、だ、駄目です……」
「ろーしても……?」
今度は眼鏡を外した顔で舌先で指の先端を舐められて、電流が走ったような衝撃で背筋が伸びる。
俺がアイドル律の顔で迫られるのが弱いことを分かっていて煽ってきてる……。
先程のテレビのように律の姿を見て夢中でいる俺に嫉妬する癖にこういうとき律を武器に強請ってくる律仁さんはやっぱり狡いと思う。
「どうしてもです」
だからと言って律仁さんのペースに合わせて居たら心臓がいくらあっても足りない。
自由人な彼だからこそ適度な『待て』は必要な気がして渉太は頑なに折れずに粘ってみると、律仁さんは観念したのか、「仕方ないなー」と呟きいては残念そうな表情を浮かべながらも指から唇を離してくれた。
「どうせ渉太のことだからシャワー浴びてないとか思ってるんでしょ?俺的には一緒に入ってもいいんだけど?ほら、準備もうちに入るって言うじゃん?」
過去のトラウマが邪魔をして、自分を暴かれるのではと怖かったのが嘘だったかのように、念願の律仁さんと心だけじゃなくて身体もひとつになれたのは先月末の話。
「り、り、り律仁さんとシャワーなんて……お、お、俺にはまだ、早すぎますっ。まだ二回目なのに……いいから珈琲飲んでゆっくりしましょう」
一度越えることが出来たからと言って、照れが無くなる訳では無いし、律仁さんの肉体美を見るのだって慣れていないのにシャワーなんて持っての他だった。
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