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大晦日の特番と律仁さん⑦
それに律のファンのひとりであった姉は律に恋人がいてそれが弟だったという事実を知ったらどう思うだろう。やはりショックを受けるだろうか。其れが怖くて律仁さんを家族に紹介する勇気が持てなかった。しかし、律仁さんとの今後のことを考えるのであれば遅かれ早かれぶち当たる問題。
「俺、まだ自分の事を家族に打ち明けていなくて……。両親を信用していない訳じゃないけど、自分の大切な人たちに大切な人を否定されるんじゃないかって、反対されるんじゃないかってことばかり考えてしまうんです」
律仁さんと出会った頃に比べて、少しだけ強くなった気でいてもまだまだ弱い部分の方が多い。良く言えば慎重ではあるが、根本からくる後ろ向きの考えは簡単に変えられるわけではないようだった。
だけど、律仁さんには自分の想いの丈に嘘はつかないと決めたのだから話さないわけにいかない。
「両親も律仁さんも両方傷つけてしまうんじゃないかって怖さもあるんですけど、正直自分が傷つくのが一番怖いんです。両親に感謝してるからこそ恩を仇で返すことになるんじゃないかって思ったら……。親不孝者だって思われたらって考えると余計に勇気が持てなくて……」
世間の同性カップルは家族の問題をどのように乗り越えて居るんだろうか。
今や性的少数派でも社会的に受け入れられつつあるとは言えども、両親の生きてきた時代はまだまだ敬遠されていた時代。不安を抱える一方でも家族だからこそちゃんと話して理解してもらいたい気持ちもあった。
うじうじと悩む俺の話にも真剣に耳を傾けてくれる律仁さんの包容力に安心して想いの丈を話すことができている。
「渉太なら大丈夫。だけど、俺たちの出会いを渉太が仇なんて思わないでほしいな。言ったでしょ?自分の気持ちは自分のものなんだから押し殺す必要はないって」
律仁さんの右手が俺の右手に覆いかぶさると、上から指を絡ませ、ぎゅっと握られた。
その体温が手が暖かくて、それが自分の気持ちを肯定していいのだと思わせてくれる。
「俺の憶測でしかないけどさ、辛い時も渉太のこと支えてくれた両親だから、少なくとも渉太の両親は渉太の幸せであることを一番に考えてくれてると思うなー……。だから、例え価値観が違くても家族なら怖がらずにちゃんと向き合うことは大切だよ」
やっぱり律仁さんの言葉は俺に勇気を与えてくれる。
両親には迷惑をかけてきたからこそ、律仁さんはこんなにいい人で、俺の大切な人なんだって。そんな人と一緒に居ることが出来て、幸せでこの人を愛しているんだって報告したい。
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