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大晦日の特番と律仁さん⑧

俺の不安な気持ちを和らげるように、左右に身体をゆっくりと揺らされながら背後から頭を二度ほど優しく叩かれる。 ゆりかごのような心地の良い揺れと律仁さんの低くて優しい声によって、抱えていた不安が凪いでいくような気がした。 「それに、俺はそんなに弱くないよ?批判なんて慣れっこだからさ。渉太の家族にいい印象受けてもらえなくても、努力するから。そうなった時は、俺を信じて一緒に乗り越えていこ?」 両親が律仁さんを紹介して、彼を傷つけるようなことは言わないとは思いたいが、それくらい俺とのことを考えてくれている本気は素直に嬉しかった。 いくら芸能人には批判が付き物だとしても、それを慣れているで片付けてしまう律仁さんが心配になるが、渉太にとっては心強い言葉だった。律仁さんがいれば、両親との問題も乗り越えられるような気さえしてくる。 「渋い顔されても何度だって麻倉律仁は超絶優しいイケメンで渉太を一生大切にしますって全力でアピ―ルをし続けてあげるから」 「自分で言いますか?それ」 「事実でしょ。俺、渉太の為ならなんでもできる自信あるし」 表舞台に出る人なのだから当たり前のことではあるが、相変わらずの自信家なところとか、誰にも屈しない心とか自分に持っていない部分なだけに尊敬する。 そして、敢えてのその自信に満ちた言葉は渉太を元気づける為の律仁さんなりの励ましであることも知っている。 「確かに律仁さんはたまにダサくて意地悪なところもあるけどカッコいいし、頼りになる時もあって·····俺はそんな律仁さんに沢山助けられてます」 「ダサいは余計なんだけど」 渉太の一言に怒った律仁さんが両脇腹を指で擽ってくる。律仁さんの擽りにより、笑いのツボが刺激され、我慢できず身体をくねらせては目尻に涙を浮かべる。 笑いが止まらなくなった渉太は「や、やめてください。擽ったい」と言うと直ぐに止めてくれた。 「渉太の弱いところ沢山知ってるんだから、余計な発言は慎みなさい」っと軽い叱咤を受け、それが更に面白くて、目尻の涙を人差し指で拭うと渉太は少し拗ね気味にムスッと仏頂面を見せている律仁さんの顔を覗き込んだ。 「でも、ありがとうございます。何だか少し両親に話してみる勇気が出たような気がします。帰省したら俺も律仁さんの為に頑張ってみますね」 律仁さんの機嫌を宥めるように笑顔でそう問いかけては、頭を撫でてみると「無理しなくていいからね?ゆっくりいこう」とこめかみに唇を寄せられたので、渉太は擽ったさを感じて首を竦めた。

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