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大晦日の特番と律仁さん⑨
律仁さんと恋人になってから毎日が楽しくて、幸せで律仁さんからの愛を沢山貰っていると実感させられている。
「そうだ、渉太。実家の住所教えて?」
「いいですけど、どうしてですか?」
直近で実家の話をしていたとはいえ、この流れで住所を聞いてくる律仁さんの意図が掴めずに、頭に疑問符を浮かべながら問う。
「渉太、お正月はずっと実家なんでしょ?何かあった時の為にも知っておいて損はないでしょ?」
「別に……連絡してくれたら俺、飛んでいきますよ?」
「いいから、もしもの為にね?俺が正月中に事故で倒れたら困るじゃん?大樹にも言伝頼めるしさ?」
「そうですけど。そ、そんな物騒なこと言わないでください」
万が一、律仁さんが何かしらで倒れることがあるなんて考えたら生きた心地がしない。
そんなことはないと信じたいが……。
どうしても実家の住所が知りたいのか、念を送るように詰め寄ってくるので、仕方なく教えることにした。
渉太はテーブルのスマホを手に取り、SNSアプリを介して住所を添付して送ると、暫くして律仁さんがポケットから自身のスマホを取り出し、通知を確認すると「サンキュー」と口元をニヤつかせていた。
いつものように何かを企んでいる感が否めなかったが、彼の言うように教えていて損はないだろうし、律仁さんは実家の住所を知って悪用するような悪い人ではないと信じているのであまり気に留めなかった。
「あー早く渉太と結婚してお嫁さんにもらいたい」
溜息を吐くようにそう呟かれ、お腹に回されていた腕にキュッと力を入れてくると、項に顔を埋められる。
今日は一段と甘えてくる律仁さんに落ち着いていたはずの鼓動が再び早くなった。
「よ、よ、よ、嫁っ!?」
首筋に当たる髪の毛のこそばゆさとお嫁さん発言に動揺して、思わず律仁さんの方を振り向くと、愛おしさを含めた瞳でじっと見つめられる。どうやら冗談で言っている訳では無いらしい。
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