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慌ただしい御正月⑧
かといって事前に打ち合わせをしたわけじゃない。俺の家族に会いたくてきたと言っていたものの、渉太が彼の素性を勝手に紹介してしまっていいのか考えものだった。
「そうね、確かに見たことあるような顔よね……?」
「渉太、どういう友達なんだ?」
顎に手を当て、首を傾げて考え込む母親と、珍しく突っかかってくる父親。
『過保護になりすぎだ』なんて言っておきながらも父もまた、多少なりとも友達を連れてきた渉太を心配しているようだった。
どういうお友達と言われてなんて説明すればいいのだろうか。ここは正直に話すべきなのだろうか……。
「渉太君の先輩というか……。渉太くんの天文サークルの先輩で、長山大樹っているんですけど、そいつと俺が友達でその繋がりで渉太くんとは仲良くなったんです。俺は今二十六歳で大学生ではないので……。勿論彼も大学院生で俺の非じゃないくらい凄く真面目ないい奴で、よく三人で御飯に行ってます」
渉太自身が親に一切話すのを躊躇っていたことを淡々説明してくれる。狼狽えて言葉にすることすらできなかったのに……。
一瞬だけ律仁さんが「大学生」ではないと発言した時、親の表情が曇った気がした。大学生の渉太が二十代後半の大人と接点を持つことなんて滅多にない。悪い友達なのではないかと疑う両親の気持ちも分かる。
律仁さんはその両親の不穏な空気を察したのか、自分だけではなく大樹先輩のことも交えてどういう関係性なのか両親に説明してくれた。
「あら、そうなの。渉太もちゃんと良くしてくれるお友達がいて母さん安心だわ。でもそうよね、大学生にしては落ち着いているとは思っていたわ」
彼への不信感は僅かに残したままではあるが、僅かに両親が安堵しているようだったので、一先ず胸を撫で下ろしたが本題はここからであることは分かっていた。
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