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強引な姉と彼女の事情と⑥

律仁さんの話も、梨渉の話もあまり人に聞かれたくないナイーブな話だけに場所選びに苦戦した結果、神社から車で十分ほどのファミレスで一息つくことにした。拝殿前でひと悶着があった後、周りの注目を一瞬だけ集めてしまい、勘づかれぬうちに逃げるように律仁さんの車へと移動した。 後部座席二人の重たい空気が漂う中で、切り出したのは律仁さんで、場所もナビで調べて仕切ってくれたことに感謝の念が堪えない。  店内に入り、四人掛けの店の一番端に位置するボックス席を希望したいと店員さんに頼んでくれたのも律仁さんだった。 そんな融通は難しいかと思っていたが、正月で客足は少ないせいか、快く受けてくれた。  先程まで律仁さんの隣を死守していた姉は、綾瀬くんがいることで大人しくなったのか、綾瀬くんと梨渉。律仁さんと渉太で隣同士に座ることになった。 「あの……麻倉さん。さっきはろくでもないとか、失礼なこと言ってすみませんでした。貴方がその……あのテレビで良く見る律だとは思わなくて……」  ドリンクバーを注文し、渉太が人数分の飲み物を持って戻ってくると綾瀬くんが向かいの律仁さんに背中を丸めて平謝りしていた。 「いいよ、いいよ。気にしないで。逆に驚かせちゃってごめんね」 「やっぱり本物ってカッコイイですね。マスクからでもイケメンオーラ感じるというか。流石、男が憧れるだけあるというか。俺の周りにも貴方に憧れている知り合い何人かいるので」 「それは、どうも」  多分律仁さんはこの手のやり取りに慣れているのか、目元を笑わせ軽く会釈をする。渉太はそんな二人に割って入ると、飲み物を各々手渡して律仁さんの隣に腰かけた。 「渉太くんもすごいね。君がまさか、芸能人と知り合いだなんて思わなかったよ」 「まぁ、色々事情があって……。それより、さっきの話はどういうことなの?」  綾瀬くんは俺と律仁さんが知り合ったことに興味津々のようだったが、それは追々話すとして、今は一番知りたいのは梨渉と綾瀬くんのことについてだった。 綾瀬くんに問い掛けると和らいでいた表情が途端に強張り始めた。椅子を座り直して背筋を伸ばすと、深く息を吐いて顔を上げる。

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