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強引な姉と彼女の事情と⑫

車内に乗り込み、行きに予約していたお寿司をお店に取りに向かう道中で、抜かりのない律仁さんは後部座席の梨渉に「苦手だなんて言ってごめんね。でも、梨渉ちゃんのことは渉太のお姉さんとしてもっと知りたいし、仲良くしていきたいって思っているから、今後とも律と共々よろしくね?あと、俺のことは別に嫌いになってくれて構わないけど弟には優しくね?」と助言をしていた。 しかし何時もの律仁さんらしからぬ、それでこそ胎児に触りそうな僅かに棘のある言い草が気になり、小声で運転席の彼に問うと「綾瀬くんがいるから大丈夫でしょ?それに下手に優しくして俺の株を上げるんじゃなくて、梨渉ちゃんには綾瀬くんしかいないって思わせたいから」と律仁さんなりに後ろの二人のことを考えてくれての意図だと分かって安堵した。 一緒に推していた梨渉には多少の申し訳なさはあるけれども……。  姉が渉太の事情を知った以上、両親には自らの口から律仁さんとのことを告げたい旨を話したら「あんなの見せられたら……。好きにすれば、私には関係ないし……」と返ってきたので、多少の不満はあれども認めてくれたらしい。 車が実家に近づくにつれて、俺たちのことよりもこれからの自身のことに意識が向けられているのか後部座席からの二人の口数が減り、空気が張り詰めていくのが分かった。 誰だって両親に大事なことを告げなければならないときは緊張するものだということくらいは分かる。 車から降りて、家に入ることへの躊躇いが生じている二人を汲んで、渉太と律仁さんが先陣を切って実家の玄関先の扉をあけたものの、後ろの梨渉は綾瀬くんに背中を支えながら前に踏み出すのがやっとだった。 終始浮かない表情をしている。 しばらくして、引き戸の音で気づいた母親が玄関先に出てくると「おかえりなさい。随分遅かったのね、あら……綾瀬くんじゃないの」と行きより一人増えた人数の顔ぶれを見て驚いていた。律仁さんと渉太はその場で左右に別れると、梨渉と綾瀬くんの背中を押して母親の前へと立たせる。 綾瀬くんは梨渉と幼馴染なので、勿論両親も顔見知りだ。 だからこその緊張というものもあるだろう。浮かない梨渉に対して、綾瀬くんは背筋をシャンと伸ばしてぎこちなくお辞儀をしていた。

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