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・会長side ――お互い険悪な雰囲気を纏ったまま、前を歩く男の後をついていく。俺は何も喋っていないのに、男が迷うことなく寮に入り役員フロアに向かうのを見て奇妙な感覚に陥った。しかもとうとう辿り着いた場所が俺の自室ともなれば、その感覚は更に膨れ上がる。 「ここ。お前の部屋だろ?」 「………」 こつん、とドアを小突いて男が俺に問う。沈黙を肯定と受け取ったのか、男は相槌を打ってドアを見た。 「寮への道程に部屋の位置も一緒、か。じゃあ…」 「な!?何してんだテメェっ」 突然ブレザーの中に手を突っ込まれぎょっとする。出てきた男の手には自室のカードキーが握られていた。 「ブレザー内側の胸ポケット。鍵しまってるとこまで同じだ」 男は手にしたそれをひらひらと振りながら不敵に笑うと、鍵を開けて勝手知ったるとばかりに室内へ入る。慌てて後を追うと奴は寝室にいた。 「何勝手に入ってんだ、ってうわっ!?」 突然腕を強く引かれ、急なことに上手く対処出来ずに体がベッドに沈む。起き上がろうとしたが男が上にのしかかってきたのでそれも叶わない。 「お前、名前は?」 「は?」 突拍子もなくそんなことを聞いてくるものだから間の抜けた声が出た。男は尚も俺に問うてくる。 「名前。下の名前だ」 「…茜」 「あかね、か…」 くつくつと喉を震わせて笑う男に眉間に皺が寄る。どうせ似合わない名前だと思っているのだろう。 「女みてぇとか言ったらぶっ殺す」 「あ?違ぇ違ぇ、やっぱ似てんだなと思ってよ」 苛立ちながら睨みをきかすと、一笑して男はじっと俺の瞳を見てきた。 「俺の名前はセンだ、茜と書いて(セン)。呼び捨てでいい」 「え、」 顔も同じで、読み方こそ違うが名前も一緒。…コイツは何者なんだ。 「ッ!ちょっ…」 センと名乗った男が俺の首筋に顔を埋める。すんすんと匂いを嗅ぐように息を吸うと、顔を離した。 「同一人物だからか?…お前、すっげぇ美味そうな匂いがする」 そう言って唇を舐め、にやりと笑うセンは捕食者の目をしていた。

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