「あっ、や、っん」 「めちゃくちゃ、よさそう」 下唇を舐めて、逢坂は逢坂で自身の熱に耐えていた。いつも顔色の悪い柴田が、その頬を赤く染めて、逢坂の上で体を痙攣させながら、快楽に耐えているなんて、なかなか視覚的には暴力的な絵だ。その原因は自分が握っているなんて、そんなもの興奮するなと言われる方が難しい。 「ごめんね、俺は奥のが好きだからさ、いつも侑史くんのいいとこあんまり触ってあげられなくて」 「ちがっ、もう、・・・もう、いれろ、よぉ・・・」 「やだ、今日は、いっぱい好きなとこ触ってあげる。いっぱい気持ち良くなって良いけど」 「や、あっ、やめっ・・・うぁっ」 「ひとりでイっちゃうのはなしね」 生理的な涙を浮かべた柴田が、信じられないみたいにこちらを見てくる。逢坂はそれににこりと笑って、浅いところを抜き差ししていた指を少し奥まで進めた。本当は柴田が好きなのが浅いところだけではないことは、逢坂は知っていたのだが、それを言うとまた柴田は怒るに決まっていた。 「しず、もう・・・ん、ほんと、むり、だから・・・」 「んー？無理じゃないよ、侑史くん。いっぱい出すからローションなくても大丈夫そう」 「なら、もう、いれ、ぁっ、ろ、よ」 「だめー」 言いながら、本当は自分も今すぐ突っ込みたいのになと逢坂は考える。でもほとんど何も考えられなくなるほど、とろとろになる柴田のことをもう少し見ていたかった。奥まで入れた指を動かして、柴田の好きな場所を探す。柴田は唇を噛んで、緩やかな刺激にまだ耐えている。 「あっ」 「・・・みっけ」 「あ、あっつ、や、もう」 前立腺を撫でると、そこから逃れそうとするみたいに、柴田はまた体を仰け反らせた。もうほとんど触っていないはずの柴田の性器は張りつめているし、逢坂は全く自分の服を脱いでいなかったけれど、自身のそれがどんな風になっているのか、逢坂にはよく分かっていた。息が続かない柴田は、耳まで真っ赤になって、震える腕で元凶の逢坂のことをそれはもう必死に掴んでいる。 「あっ、も、だめ、ん・・・」 「イきそ？なかきゅうきゅうだよ」 「しず、や、やめ・・・っ」 腕に食い込む指が柴田の限界を示している。逢坂はそれを実に冷静に判断して、ずるりと指を抜いた。ふっと柴田の体から力が抜ける。 「な、ん・・・し、ず・・・」 「ん、先にイっちゃだめって言ったでしょ」 「・・・で、も」 もうちょっとだったのに、最後まで与えられない快楽のせいで、柴田の奥がじりじりしているのは分かった。柴田は多分元々感じやすいひとだったから、柴田とセックスをしようとすると、逢坂が一回果てる間に、柴田のことを何度も果てさせてしまう。そうして終わった後、眉間に皺を寄せながら、お前とすると疲れると言われたりするのだ。これはそのことへのちょっとした報復なのかもしれないと思いながら、逢坂は自分のベルトをようやく外した。柴田は不服そうにしながら、逢坂の上で思ったより大人しく、もしかしたら何か反論するほど体力が残っていないのかもしれないが、じっと動かないでいる。 「挿れるよ、ゴム取り行くの面倒だからこのままでいい？」 「・・・ん、いい」 短い呼吸の合間に、柴田は投げやりになって応えた。逢坂は柴田の小さい顎にキスをして、唇の端をきゅっと引き上げて笑った。 「侑史くんちょっと腰浮かして」 「・・・なぁ、おれ、このかっこやだ」 「大丈夫、動くの俺が動くから」 「・・・しず・・・」 何かまた言いたそうにして、結局柴田は口ごもった。そして迷ったような指が逢坂の体をするすると上がって、その肩を掴む。今日はどうしたのかよく言う事を聞いてくれる。そこに体重をかけるみたいに、柴田はソファーの上で逢坂と向かい合う格好のまま、膝立になる。濡れた指をその柴田の後ろ孔に沿わせると、逢坂の肩を掴んだ柴田の腕がびくびくと震えた。その入り口を開かせて、勃ち上がった自分のものを宛がう。ちらりと柴田の様子を見上げると、きつく唇を噛んでいた。痛いわけではないだろう、何でこんな表情なのだろう、考えながら逢坂は柴田の腰を掴んでゆっくり下げさせた。 「あっ、あっ・・・」 「ん、じょうず、侑史くん」 「あ、うっ・・・んんっ」 目を瞑って快楽とも痛みとも言えぬものに耐える柴田の額に、薄ら汗が浮かんでいる。逢坂はそれをいたわるように舐めて、自身を全部柴田の中におさめた。挿れたらそのまま果ててしまうかなと思っていたが、柴田のものは張りつめたままだらだらとまだ透明な液を零している。 （でもそろそろ限界かなぁ・・・） 「し、ず・・・っ」 耐えられないみたいな声が耳の傍で聞こえて、逢坂は柴田を宥めるようにその背中を撫でた。 「侑史くん、きょう、良く我慢したね、ん、もう、好きにイっていいから」 そうしてにこりと笑うと、柴田は赤くなった顔を隠す術がなくて、それを無理矢理俯かせると、僅かに頷いた。多分これは動いたらすぐに果ててしまうのだろうと考えながら、逢坂は開かせた柴田の足の下に腕を通し、持ち上げるみたいにしながら、奥を突いた。 「あっつ、あっ、や、ん」 「ゆう、しくん、声、かわいい」 「や、め・・・っつ、う、あっ」 「はは、かわいい、たま、んない」 柴田は浅いところも好きだったけれど、前立腺も勿論好きだったし、逢坂がよく締まるからとしつこく攻める奥だって、中を擦れば擦るほど、きゅうきゅうと纏わりついてきて、無自覚なのだろうがおそらく酷く感じている。好きなところが多いのはいいことだし、それが一緒なら尚良いことだと考えながら、逢坂は柴田の唇に、呼吸を奪わないようにキスをした。 「や、あんん、もっ・・・イ、ク」 「ん、イって、いいよ」 腕が震える。柴田が目を閉じたのに合わせて、一番奥を突いてやると、ぎゅっと柴田の中が締まった。そしてやや遅れて、柴田のものが白濁を吐き出した。 「はぁっ、あ・・・」 まだ後ろに咥えたまま、柴田が力尽きるみたいに逢坂にしな垂れかかってくる。その柴田の体を持ち上げるみたいにして、逢坂はまたじりっと動いた。