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04
チュンチュンと小鳥が囀 る声がする。夢うつつの中でそれを聞きながら、俺は気怠 さに目を覚ました。
「お、起きたか。寝ぼすけ」
結論から言うと幸いにもゲームオーバーにはならなかった。
「全快したか?」
「……多分」
俺が寝ていたベッド脇に横座りしたシヴァが、俺の髪を乱暴に撫でてくる。
あのあとHPが0になって半ば気絶したようになった俺を見て、シヴァは手がつけられないくらい怒り狂ったらしい。モンスター達を一撃で倒してしまうと、動けない俺を肩に担いでその場を後にして。
「いらっしゃいませ」
向かった先は宿屋で、俺は文字通り死んだように眠った。一日眠れば全快するのはRPGな世界のお約束で、どうやら俺もなんとか助かったらしい。
それにしても仲間がいればゲームオーバーにならないなんて、そんなルールは聞いたことがない。自分一人だった時はギリギリで交わしてきたし、無理そうな戦闘は回避してたからよく分かんないけど。
そういや初めてのバトル、つまりはシヴァと初めてやった時も、イってしまって動けない俺をシヴァが宿屋まで運んでくれたっけ。翌朝にまた腰が砕けるまで犯されたけど。
「ポチ、やっぱお前弱すぎだろ」
「あ……」
シヴァからこっちでの名前を呼ばれて、思わず胸キュンにときめいた。そっか。俺はまだこっちではポチなんだ。けどやっぱこの名前にも愛着が出て来たのか、ポチと呼ばれることが今は堪らなく嬉しい。そんな俺に少し笑って、
「仕方ない。今日も特訓だな」
「え、ええっ。病み上がりなのに?!」
シヴァはそんな鬼教官のようなことを言って来た。普段は暇さえあれば修業というか訓練もどきな体力作りを兼ねた運動をしてるんだけど、負けたからやっぱ特別メニューなんだろうか。その運動と言うのが……、
「お、お手柔らかにお願いします」
「さてどうだかな」
「ちょ、無理だって!」
「スパルタで行くから覚悟しとけよ」
「む、無理ぃー!」
お察しの通りいつものだったりするのだけども。簡単な朝食でフルチャージした後、
「おはようございます。いってらっしゃいませ」
宿屋の主人に見送られて宿屋を後にした。雨が降る前兆なのか、湿気を含んだ空気が纏 わり付いて来る。
「ポチ、大丈夫か」
「うん、大丈夫。それにしても蒸し蒸しするな」
「少しだけ急ぐぞ」
「うん」
昨日に続いて森の中を進む。夕方くらいには森を抜けて次の村に着く予定だけど、シヴァは俺を気遣いながらも、いつもより少しだけ歩くスピードを上げた。
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