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第三章・2
やがて慎也は、駐車場へ足を踏み入れた。
(あ。フェラーリだ!)
あの時と、同じ。
そして、この人は……。
「ぐずぐずするな。乗れ」
(やっぱり、あの時と一緒!)
悠は急いでナビシートに座り、シートベルトを締めた。
それを確かめてから慎也はアクセルを踏み、車は走り出した。
運転中、二人はほとんど会話をしなかったが、そのわずかな言葉は重要なワードだった。
「お兄さん、名前は何ていうの?」
「久貝だ。久貝 慎也」
「僕は、悠」
「姓は?」
「……捨てた」
姓を捨てた、ということは。
「お前、親は?」
「知らないよ、あんな奴ら!」
激しい悠の口調に、慎也は確信を持った。
(やはり、家出少年だったか)
それきり、話はしなかった。
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