22 / 68
第四章 二人の身の上
朝、昨晩の雨はまだ降り続いていた。
そんな雨雲をテラスから眺めながら、悠は複雑な思いを抱いていた。
「昨夜、何であんなこと言っちゃったんだろう」
『僕が、恋人になってあげても、いいよ』
『うん。僕、慎也さんの傍にいたい……』
ほとんど寝言だったが、嘘ではない。
「でも、慎也さんはヤクザなのに」
ヤクザなんかと関わり合いは持ちたくない、とあれほど怖がっていたのに。
そこへ、背後から突然声がした。
「来い。朝食だ」
「びっくりしたぁ!」
(僕の独り言、聞かれてないよね)
少しドキドキしながら、慎也の後を歩く。
キッチンには、以前と同じように素敵な食事が用意されていた。
「いただきまーす!」
「よく噛んで、食べろ」
前はふわふわのミルクパンだったが、今日は固いカンパーニュだ。
もぐもぐとパンを噛みながら、悠は話すことを考えていた。
ともだちにシェアしよう!