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第四章 二人の身の上

 朝、昨晩の雨はまだ降り続いていた。  そんな雨雲をテラスから眺めながら、悠は複雑な思いを抱いていた。 「昨夜、何であんなこと言っちゃったんだろう」 『僕が、恋人になってあげても、いいよ』 『うん。僕、慎也さんの傍にいたい……』  ほとんど寝言だったが、嘘ではない。 「でも、慎也さんはヤクザなのに」  ヤクザなんかと関わり合いは持ちたくない、とあれほど怖がっていたのに。  そこへ、背後から突然声がした。 「来い。朝食だ」 「びっくりしたぁ!」 (僕の独り言、聞かれてないよね)  少しドキドキしながら、慎也の後を歩く。  キッチンには、以前と同じように素敵な食事が用意されていた。 「いただきまーす!」 「よく噛んで、食べろ」  前はふわふわのミルクパンだったが、今日は固いカンパーニュだ。  もぐもぐとパンを噛みながら、悠は話すことを考えていた。

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