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第四章・3
「お金持ちになれば、いいことだらけに決まってるじゃん」
なぜ、慎也さんはあんなことを言うんだろう。
『やめておけ。金持ちなんて、ろくなことが無い』
「何か、わけがあるのかな」
しかし、素直な悠には深読みは苦手だ。
考えることをやめ、悠もごちそうさまをしてキッチンから出た。
リビングへ行くと、先に来ていた慎也が電話の最中だった。
「だから、その件は断ると言ったはずだ」
『……』
相手の声は、悠には聞こえない。
だが慎也は、少しイラついているようだった。
「親父の遺言には、従う。それが残された私たちの務めだろう」
『……』
「私の意思は、変わらない。いい加減、悟れ」
『兄貴!』
そこまでで、慎也は通話を切った。
ふと顔をあげると、悠がいる。
心配そうな表情で。
「今の、誰? 兄貴、って言ってたけど。弟さん?」
「聞いてたのか」
「聞こえちゃった」
慎也は溜息をつくと、ソファの隣をぽんと叩いた。
「ここへ来い」
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