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第四章・5

「親父は平等に分けたつもりだったんだろうが、私のもらった土地の方が、アガリがいいんだ」 「アガリ?」 「稼げる、ということだ」  慎也とその弟は、この街の半分ずつを手に入れた。  だが、慎也の持つ場所の方が、稼ぎがいい。 「そこで弟は、私の土地を少しよこせと言い出したんだ」 「ふぅん」  悠は、それでようやく朝食の席での言葉を理解した。 『やめておけ。金持ちなんて、ろくなことが無い』 (慎也さんは、この弟さんとの揉め事をさして、そう言ったんだな) 「ありがとう」 「ん?」 「そんな大事なこと、僕に話してくれて、ありがとう」 「……」  確かにな、と慎也は思った。  二度会っただけの少年に、組を二つに分裂させている理由をぺろっと話してしまうとは。  立ち上がり、窓辺へ立った。  雨雲が切れ、そこから明るい光が射している。 (この子は。悠は、あの雲の切れ間からのぞいた光なのかもしれない) 「悠」 「なに?」 「私は10日ほど海外に行く。ついて来てくれれば、これだけ支払う」  そこで慎也は、人差し指を一本立てた。

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