27 / 68
第四章・6
慎也の申し出に、悠は舞い上がった。
(初めて名前で呼んでくれた! 一緒に旅行!? 嬉しすぎない? それ!)
人差し指一本は、きっとまた百万円なのだろう。
慎也と共に過ごせて、お金までもらえるなんて、イイこと尽くしだ!
「行く!」
「よし」
出かける用意をしろ、と短く言うと、慎也は電話を掛けた。
何か話していたようだが、悠の耳にはもう届かない。
「嬉しいな。嬉しいな、ったら、嬉しいな!」
出かける用意、とは言っても、悠の手荷物は小さなバッグ一つだけだ。
あっという間に、整ってしまった。
それを見た慎也は、口の端を上げて笑った。
「まずは旅行支度をしなくてはな」
(慎也さん、初めて笑ったぁ!)
悠はもう、天にも昇る心地で慎也と共に出かけた。
行った先は、街の中心だ。
そこで、スーツケースから服に靴、オーラルケアのトラベルセットまで全部そろえた。
支払いは、全て慎也がカードで行った。
「僕、百万円持ってるんだから、自分で買うよ」
「その金は、旅行先で使え」
銀行で日本円を外貨に換え、最後に行った先がなぜか病院だった。
「お前が妙な感染症にかかっていないか、調べる」
「かかってないよ!」
幸い悠は、性病には侵されていなかった。
痩せ傾向と栄養状態が悪い、との診断を受けてしまったが。
ともだちにシェアしよう!