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第六章・2
シュノーケリングに、カヤック。貝殻拾いに、魚の餌付け。
海のレジャーを一通り済ませてしまうと、悠は街へ出たいとねだった。
「おみやげとか、見たいな」
「ホテルにもショップは入っているぞ」
「この島で暮らす人たちを、見てみたいんだ」
「仕方が無いな」
残すところ、あと5日。
折り返し地点に来た旅は、悠の好奇心をかき立てた。
高級ホテルを出て、道路を歩く。
しばらく行くと、噴水のある公園へ着いた。
「きれいな公園! だけど……」
「何だ」
「いるのは、旅行客ばかりみたいだ」
「確かにな」
悠が見てみたいのは、清潔で無機質な名所ではなく、雑多な人の呼吸があるところなのだろう。
そこで慎也はタクシーを拾い、リゾート地から離れた市場へ向かった。
「ここでは、どうだ?」
「うん! こういう所が、見たかったんだ!」
色とりどりの果物が、雑然と並べられた屋台。
異国の言葉が賑やかに飛び交う、石畳の道。
褐色の肌の子どもたちが、笑いながら走り抜けてゆく。
そんな中を、二人は歩いた。
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