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第六章・3
「ねえ、慎也さん。僕、買い物してみたいなぁ」
「いいぞ。挑戦してみろ」
よし、と悠は果物の露店で立ち止まると、欲しいものを指さした。
途端に、店番の女が早口で何か言ってくる。
とまどった悠は、縋るような目で慎也を見たが、彼はにやにやして助けてくれない。
「えっと。一つ、ください。これ」
悠が人差し指を立てると、女はこれまた何かしゃべりながらそれを渡してくれた。
「お代はいくら?」
悠は財布の中の紙幣を、数種類出して見せた。
女は首を振り、コインを指した。
「じゃあ、これ? 違う? だったら、これ?」
ようやく支払いを済ませると、悠はほっとした顔で慎也に振り返った。
「ああ、楽しかった!」
「うまく出来たな」
それにしても、と慎也は苦笑いした。
こんなにたくさん、たべられるのか?
悠は、木の枝に鈴なりになった果実を買ったのだ。
「この、少し固い外側の皮をむいて食べるんだって」
「この果物は、美味いぞ。いい買い物をしたな」
ホテルへ戻って、一緒に食べよう。
この日の悠の、プチ冒険は終わった。
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