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第六章・4
シャワーを浴びて、さっそく謎の果物の試食会だ。
「ね、見て! 皮は固いのに、中はこんなに柔らかい!」
赤黒い皮をむくと、中からは真っ白い果肉が現れた。
「う~ん! おいしい!」
「確かに、美味い」
心地よい歯ごたえに、甘い果汁が口いっぱいに広がる。
「いくつでも、食べられそう」
「ほどほどにしておけ。夕食が入らなくなるぞ」
貪るように果物を食べていた悠だが、ふと思いついたように慎也を見た。
「ねえ、慎也さん」
「何だ」
見ると、悠は果肉を口にくわえて顔を突き出している。
(これを食べろということか?)
そんなに私と、キスがしたいのか。
そっと慎也は、悠に顔を近づけた。
(あ、もうすぐ。もうすぐ、僕。慎也さんと、キス……)
だが慎也は、上手に果物だけを口にした。
「もう! 何で解ってくれないのさ!」
「解ってるから、こうするんだ」
もういいよ、とぶつぶつ言っていた悠だが、諦めは悪かった。
「慎也さん!」
再び背後から呼ばれ、慎也は面倒くさげに振り返った。
ぐっ、と唇に押し付けられた果物。
反射的にくわえると、すかさず悠がその反対側をかじってきた。
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