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第七章・3
ぽろり、と涙をこぼす悠の瞳だ。
「泣かないでくれ。私も、辛い」
「ホント?」
ああ、と慎也は悠の手を取った。
「だが、このところ組の内情が不安定だ。お前に危険が及ぶ恐れがあるんだ」
「あの、弟さん?」
「うん。組は今、私を中心にする派閥と、弟を擁立する派閥とに分かれている」
悠は、慎也の顔をうかがった。
悲しそうな、辛そうな表情だ。
「弟は、私の地位と財力が欲しくてたまらないんだよ」
ぎゅっ、と悠の手を握る慎也の力が強くなった。
「苦しいんだね、慎也さん」
これ以上、彼を困らせる材料を作りたくない。
悠は、決心した。
「解ったよ。僕、明日ここを出るよ」
「すまない」
「最後に、抱いてくれる?」
「ああ」
慎也と悠は、寝室へ向かった。
悠のパジャマは、もうぶかぶかではない。
自分用のものを、ちゃんと買っているのだ。
ずっと、ここにいるつもりだったから。
ずっと、ここにいられるつもりだったから。
そのパジャマをさらさらと脱ぎ、悠は素裸になった。
慎也はいつもどおり、着衣のままだ。
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