53 / 68
第八章・3
ダメだよ、と悠は慎也を叱った。
「溜息をつくと、幸せが逃げて行っちゃうんだよ?」
「お前は相変わらず、ポジティブだな」
確かに、溜息をついても仕方がない。
慎也は伸びを一つすると、微笑んだ。
「それで? 億万長者の悠さまは、これからどうするんだ?」
「解ってるくせに、バカぁ」
慎也さんのマンションに、行きたい。
慎也さんと一緒に、暮らしたい。
それが、僕の一番の幸せと解ってしまったから。
「もう、お金持ちにならなくってもいい。慎也さんさえ、いてくれれば」
「悠」
私も、そうしたい。
私の幸せもまた、悠抜きでは考えられないから。
「弟との和平を考えて、今後は動くことにするか」
権力も、財力も、好きなだけくれてやるさ。
そうすれば、悠を危険にさらすことはないだろう。
「慎也さん、ポジティブ!」
「お前の楽観主義がうつったかな」
二人で、コーヒーカップを合わせて乾杯をした。
再会を祝し、乾杯。
明るい未来に、乾杯。
ともだちにシェアしよう!