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第八章・3

 ダメだよ、と悠は慎也を叱った。 「溜息をつくと、幸せが逃げて行っちゃうんだよ?」 「お前は相変わらず、ポジティブだな」  確かに、溜息をついても仕方がない。  慎也は伸びを一つすると、微笑んだ。 「それで? 億万長者の悠さまは、これからどうするんだ?」 「解ってるくせに、バカぁ」  慎也さんのマンションに、行きたい。  慎也さんと一緒に、暮らしたい。  それが、僕の一番の幸せと解ってしまったから。 「もう、お金持ちにならなくってもいい。慎也さんさえ、いてくれれば」 「悠」  私も、そうしたい。  私の幸せもまた、悠抜きでは考えられないから。 「弟との和平を考えて、今後は動くことにするか」  権力も、財力も、好きなだけくれてやるさ。  そうすれば、悠を危険にさらすことはないだろう。 「慎也さん、ポジティブ!」 「お前の楽観主義がうつったかな」  二人で、コーヒーカップを合わせて乾杯をした。  再会を祝し、乾杯。  明るい未来に、乾杯。

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