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第九章・2

 慎也を撃った犯人は、警察へ自首してきた。  自分の単独行動で、決して命じられたものではない、と言い張った。  だが、誰もが思った。  慎也の弟が、やらせたことに違いない、と。  そんな弟に、慎也は自ら電話を掛けた。 「お前を許す。私はこうして、生きているんだからな」 『いや、兄貴。あれは若い者が勝手に!』 「周囲がお前をどう見ているかくらい、解るだろう。分裂した組は今、弱体化している」 『……』 「仁道会が、お前のシマを。お前を狙ってる。いや、どの組もそうだ」 『兄貴』 「私は、この地位も財力も、お前に譲ってもいいと考えてる」 『……嘘だろ』 「嘘なもんか。もう一度、組を立て直す。それしか隆誠会の生き残る道は、無いんだからな」  考えさせてくれ、と言い残し、弟は通話を切った。  結局彼は、慎也の元へ戻った。  街の少しを、ねだっただけで。  組の頭になる度胸も、街の全てを統べる度量も、彼は持ち合わせていなかったのだ。

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