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第九章・3

「僕、慎也さんに謝らなきゃならないこと、あるんだ」 「謝る?」  退院し、マンションに帰った慎也は、悠に妙なことを切り出されていた。  私のために必死で祈って、生還させてくれた恩人が、何を謝る、と? 「ポリスに職質された時、慎也さんとの関係を……、恋人です、って言っちゃった」  慎也は目をぱちぱちさせた後、笑顔を見せた。 「ありがとう」 「え?」 「私のことを、そんな風に思っててくれたんだな」 「慎也さん」  もし立場が逆になっても。  私もきっと、悠のことを恋人だと答えるだろう。 「恋人で……、いいの?」 「それでも足りないくらいだ」  そこで、急に慎也は落ち着きを失くした。  目を逸らし、何か言いかけ、手を口元に持って行き。 「どうしたのさ」 「いや、その」  できれば。 「婚約者、ではどうだ?」 「慎也さん!?」

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