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デート9
信がトイレのドアを勢いよく開けた瞬間
洗面台の上に上半身をうつ伏せに投げ出し…
コチラを見て涙で潤んだ瞳を大きく見開いて驚いた表情を見せる葵の姿と
その後ろで下半身だけ脱がされ――
肉付きの薄い葵の臀部 を両手で鷲掴み
今にもその見たくもなかった赤黒くそそり勃った醜い一物で
葵のナカに押し挿りそうな姿勢で固まっている男と
その男の横で葵の上半身を軽く片手で押さえつけている男の姿が見え――
―――葵…、ッ、コイツらよくも葵を…っ!
その光景に信の蟀谷 にはビキビキと青筋が立ち…
信は開けたドアに無理矢理大男の身体を押し込めながらトイレの中に入ると
後は勢いに任せ…
「ちわ~~っす!三河屋で~~~す!
お届け物を届けに参りましたよっ、、っとっ!」
声を張り上げ――信は拘束していた大男の腕をパッと離すと
突然の乱入者に驚き…茫然と立ち尽くす二人の男めがけ
大男の背中を思い切り蹴り飛ばした
「あ”ぅっ、」
「ッなっ、、」
「勝っちゃんっ?!」
信に背後から蹴り飛ばされ…
その勢いでほぼ小走り状態で自分たちの方に向かってくる大男の姿に
その場に固まっていた二人は反応が遅れ――
「ッ!?ちょちょちょちょっ、、」
「ちょバカっ!こっちくん…ああああっ、」
二人は葵から離れながら逃げようとその場から後ずさりするも
勢いよく自分たちの方に倒れてきた大男の身体を避けきれず…
半ば大男に押し倒される形で三人は揃ってその場にドッと倒れ込み
男達は床の上で悶絶しながら呻き声を上げる…
しかし信はそんな男たちには目もくれず
焦った様子で葵の元に一目散に駆け寄ると
葵の口を塞いでいた銀色のガムテープをベリッ!と勢いよく引っぺがし
次いで葵の手首や腕に服の上から執拗に巻かれていたガムテープも
悪戦苦闘しながら引き剝がしていく…
「…ッ、の…ぼる…、」
「葵…、ッ、ちょっと待ってろ。今、解いてやるから…」
信はベタつき絡まり思うように剥がせないガムテープにイライラしながらも
それでも葵の腕に巻かれたガムテープを徐々に剥がしていき――
やがてそのガムテープを剥がし終わると
信は洗面台に突っ伏していた葵の身体をそっと抱き起すが
恐怖と緊張からか葵は足にまったく力が入らず…
信は碌に立てそうもない葵を気遣うように抱きしめると
二人は洗面台を背にその場にズルズルと座り込んだ…
「…大丈夫か…?葵…
何処か怪我は?痛いところは――」
「――ッ、のぼる…のぼるが来てくれた…、
のぼる…信…ッ!」
信の顔を見た途端…葵の顔は見る見るうちにクシャクシャに歪み――
葵は思わず信にしがみつきながらその胸元に顔を埋めると
まるで子供のように泣きじゃくる…
「うぇ…グスッ、のぼる…のぼる…っ、
おれ…、ッ、俺ぇ…、」
「ッ葵…怖かったな。もう大丈夫だから…
ごめん…ホントごめんな?…来るのが遅れて…、
俺がもっと早くに気がついていれば…ッ、」
他にももっと葵にかけてやりたい言葉があったハズなのに…
普段なら嘘でもポンポンと言葉が出てくるハズの信の口からは
珍しく気が動転している為か
こんな時に限ってこれ以上の言葉は出てこず…
信は歯がゆい気持ちを抱えながら
泣きじゃくる葵を優しく抱きしめ…その頭を撫でる…
そこに葵も信の胸元に顔を埋めたまま小さく頭を横に振り――
信を抱きしめる腕に更に力を込めながら小さな声で呟いた…
「ッ、信は何も悪くない…、
それよりも信が来てくれた…それだけで……それだけで俺は…、ッ、
嬉しかった…から…」
「―――ッ、、葵…」
葵はまだ恐怖心が抜けきっていないのか小刻みに身体を震わせ
それでも懸命に言葉を紡いで信に自分の気持ちを伝え――
信はそんないじらしい葵の姿にグッと胸が詰まり…
後から後から湧き上げってくる“何とも言えない”…
でも“ソレ”が“何か”は分かっているモノに蓋をし
信は更に強く葵を抱きしめながら何とか言葉を振り絞った…
「…兎に角お前が無事でよかった…葵…」
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