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好き。
「フフ…」
―――寝顔…可愛い…
キングサイズのベッドの上で、信と葵は互い向き合い
信は約束通り葵を抱きしめながら眠りにつき――
葵は信に緩く抱きしめられながら珍しく自分より先に眠りに落ち…
目と鼻の先で無防備に自分に寝顔を晒す信の顔を
微かに微笑みながらマジマジと見つめる…
―――信…まつ毛長い…あ、ちょっと口開いてるの…可愛い…
葵は微笑んだまま信が起きはしないかと少しドキドキしながら
微かに開いた信の口元に手を伸ばし…
指先でソっとその唇に触れてみる…
―――…やわらかい…
葵は人差し指の先で信の下唇をツンツンと押してその感触を楽むと
そのまま下唇をツゥー…となぞるようにして触れていき…
やがてその指先が信の口角に辿り着いたところで
葵は指先でクイッ…と信の口角をちょっと持ち上げ
「ニィ~…」と小さく呟きながら無理矢理作った信の“笑顔”を
悪戯っぽい笑みを浮かべながらジッ…と見つめ――
「…………プッ、、」
そんな信の“笑顔”にとうとう耐え切れなくなった葵は思わず噴き出し
肩を震わせながら笑い出す…
「ククッ…、」
―――信…可愛い…、ッ、
信の寝顔を見つめながら高まっていく高揚感の中…
葵は何をやっても起きる気配のない信の寝顔に頬を染め…
はにかんだ笑みを浮かべながら信の顔を見つめ続ける…
―――のぼる…
起きている時は――
その精悍な顔立ちと鋭いグレーの瞳も相まり…どんなに砕けた話し方をしても
何処か冷たい印象を持たれがちの信の顔だが――
こうして瞼を閉じ…眼鏡をはずして眠る信の顔はとてもあどけなくて…
「……、……き…」
葵は周りには聞き取れないほどの小さな声で何かを呟くと
信の唇に触れていた指先をゆっくりと離し…
そのままその指先を自分の口元へと近づけ――
ソっ…と自分の唇に触れると
熱っぽく潤んだ瞳で信の事を見つめながら
もう一度先ほど呟いた言葉を口にした…
「……す……き…」
―――俺やっぱり…
信の事…
好き…
かもしんない…
「………」
もっと前から葵の中には自覚はあった…
それはフレンチレストランで
いもしない信の恋人に不安や嫉妬を覚えた時だったかもしれないし――
実はもっと前からだったのかもしれないし…
でも葵はソレに蓋をして
このまま何も気づかないフリをしようとした…
しようとしたのに――
「…すき…」
それでも葵の中の信に対する気持ちはどんどん膨れ上がる一方で…
「好き…」
言葉にして出してしまえば…
後はその気持ちが堰 を切って葵の中から溢れ出るばかりで――
「信…好き…」
葵は今まで自分の唇に触れていた手をギュッと握りしめ――
切な気にその瞳を揺らしながら
まるで救いを求めるかのように信の寝顔を見つめ続ける…
―――ねぇ信…
この気持ち…どうしたらいい…?
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