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戸惑い。困惑。
信side
「………」
―――…顔に穴が開いちまう…
俺と葵はベッドの中で横向きで互いに向かい合い…
俺は自分の右腕を自分の枕にしながら
約束通り左腕で葵の身体を緩く抱き寄せ――
葵の背中に回した左手でまるで赤ちゃんをあやす様に
優しく葵の背中をトントンと叩きながら
目の前で恋する乙女のような微笑みを浮かべ――
飽きもせずに俺の顔をジッと見つめる葵に向け
俺は微睡…少し呆れた笑みを浮かべながらその口を開いた…
「…なぁ…」
「…ん?」
「…飽きないか…?」
「…何が?」
「俺の顔見てんの。」
「…飽きない。
むしろずっと見てたい…信…カッコイイから…」
「………そらどーも…」
葵の素直な誉め言葉に俺はフッ…と微笑み…
いよいよ重くなり始めた瞼に逆らえずに
俺はゆっくりとその瞼を閉じ…微睡の中へと落ち始める…
―――…ずっと見ていたい…か…
なんか…勘違いしちまいそうだな。葵から…そんな事言われると…
「信…?」
「…ん…?」
「寝ちゃう…?」
「んー…寝ちゃう…
ゴメン…俺限界だわ…お休み…葵…」
「…お休み…信…」
葵にそう言ったの境に――
俺の意識はそのまま微睡の中へと沈んでいった…
※※※※※※※
…どれくらい時間が経っただろうか…
恐らくまだそんなには時間は経っていないとは思うが――
何かが俺の唇をツンツンと触れている感触に
完全に微睡の中に沈んでいたハズの俺の意識は再浮上を余儀なくされ
俺はその瞼を上げようとする…
しかし――
「ニィ~…」
という葵の呟く声と同時に
俺の口角が恐らく葵の指先でクイッと持ち上げられ――
「………」
―――なんだよ「ニィ~…」って…
可愛いじゃねーか…
葵のその意味不明な言動に
まだ寝ぼけていた俺は完全に起きるタイミングを失い
俺は目を瞑ったまま声もなく固まる…
そこに葵の「…………プッ、、ククッ…、」という
声を押し殺した様子の笑い声も聞こえてきたもんだから
俺はこの状況が飲み込めずにますます困惑するばかりで――
―――葵のヤツ…まさか寝てる俺の顔で遊んでやがんのか…?
まったく…何やってんだか…
俺は葵のそんな子供っぽい行動に呆れながらも微笑ましく思い…
つい破顔しそうになるのを堪えながら
未だに俺の口角を指先で持ち上げながらクスクスと笑う葵に
ちょっとした悪戯心が芽生え…
―――人の顔に悪戯する悪い子には――お仕置きが必要だな。
ここはひとつ…脅かしてやるか!
そう思い…俺は葵に気づかれぬよう
いつの間にか葵の腰のあたりにまでズリ下がっていた自分の左腕を
そっと動かそうとしたその時…
「……、……き…」
「…?」
不意に葵が何かを呟いたのが聞こえ――
俺は思わず動きを止める…
―――…き…?
「き」ってなんだよ…と思いながらも完全に聞き取れなかったその言葉に
俺がやきもきしていると
今まで俺の唇に触れていた葵の指先が俺の口元から離れ…
一呼吸置いてからまた葵が何かを呟き――
「……す……き…」
―――…何だ…?す…き…?
今度は先ほどよりかは聞き取れたが――やはり要領を得なくて
俺は更に聞き耳を立てる
すると葵はさっきから同じ言葉を繰り返しているのか
また同じ言葉を呟いて――
「…すき…」
―――好き…?何が…?
「好き…」
―――だから何が――
「信…好き…」
「………」
葵のその一言に
俺の時間は完全に停止した。
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