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3ポイント。

時刻はもうじき王凱との約束の時間である18時に差し掛かろうかというところ… 信はタクシーから降り、目的地である榎戸組事務所まで 夕暮れ時の歓楽街の雑踏の中を一人…歩いて向かっていたが―― ―――ん…?あそこに居んのってまさか―― 信が見えてきた榎戸組事務所が入るビルに目をやると 時折人波の隙間からチラチラと、事務所入り口横の壁にもたれ掛かり… 腕を組んで(たたず)む長身の男性の姿が見え―― ―――うわ~お……そのまさかだよ…    スーパーひとしくんじゃねーか…最っ悪… 身長188cmに端正な顔立ち… 黒く(つや)やかな前髪をかき上げ七三のオールバックで決め ダークスーツをビシッと着こなしたその男性…真壁 仁の立ち姿は 主に女性たちの目を惹きながら、とても目立っており―― ―――アイツ…つくづく張り込みとかには向かねーよな…    目立って… とても一般人には見えない仁のその姿を遠巻きに見つめながら信は足を止め… 近くの建物と建物の隙間に滑り込むようにしてスッとその身を(ひそ)めると 事務所の様子を伺いながら途方に暮れる… 「ハァ~…」 ―――…にしても参ったねぇ…コレじゃ事務所には近づけねーじゃねーか…    てか何でアイツが榎戸組の事務所に…    !?    まさか… 信の脳裏に一つだけ… というか今仁がそこにいる理由がそれしか思い浮かばず 信の表情が一気に険しくなる… ―――例の黒狼会の…若頭候補殺害の件か… 信は壁に寄りかかりながら再びチラリと仁の方を伺い見ると 口に手を当てながら考え込む… ―――昨日アイツが俺に見せた写真には    榎戸組に繋がるような何かは見て取れなかったが――    あの写真以外にも現場には榎戸組に繋がる何かがあったという事か…?    それでアイツは昨日――榎戸組を傘下に持つ昇竜会を疑い…    ()いてはその昇竜会との関わりを疑っていた俺のところに    写真持ってわざわざ訪ねて来たってワケか…    何とも回りくどい… 「ハァァ~~…」 信は今度こそ盛大な溜息を吐き出すと 黒のステンカラーコートのポケットからスマホを取り出す ―――しかしまあ…これじゃあどっちにしろ事務所には近寄れねーし…    今から王凱に電話して――今日会うのを取り止めにするか… そう思い、信が王凱に電話をかけようとしたその時―― ブブブブブ…ブブブブブ… ―――お? 信の手に持っているスマホが突然バイブしだし… 信がスマホの画面に視線を移すと 丁度今、電話をかけようと思っていた人物の名前が その画面に表示されていて―― ピッ、 「…王凱。」 『信…悪いが今日の予定はキャンセルだ。  サツがウチに来てる。』 「…らしいな。  今お前んとこの事務所の近くまで来ているんだが――  事務所の玄関横にデカいシェパードが一匹…  お座りして飼い主の帰りを待ってんのが見えてるからな。」 『…だろ?…まあそーいうわけだから――会うのはまた今度って事で。』 「…分かった。  それじゃあまた暇なときにでも俺の方からお前に連絡するわ。」 『おーけー…じゃあな。』 ピッ…と通話は切れ―― ―――さて…と――    それじゃ俺もそろそろ――葵の待つ家に帰るとするかな。 信はスマホをコートのポケットにしまい その場から離れようとして、もう一度事務所の方を伺い見る ―――…あれ…? するとさっきまで事務所の玄関横に立っていたはずの仁の姿が いつの間にか消えていて―― ―――アイツ…一体どこに… 信がゆっくりと隙間から姿を現し 流れる人混みに混じりなが軽く辺りの様子を見回す… すると突然…背後からガシッ!と信は肩を強く掴まれ―― 「…信。」 「ッ!?!?」 信はソレに心臓が飛び出そうなくらい驚き… 更には背後から自分の名を呼ぶその聞き覚えのある声に 信は背筋に冷たいものが伝うのを感じながらその場から動けずに固まる… そこに信の背後にいる人物が低い声で話しを続け―― 「…お前…こんなところで何してる…?」 「さ、、さぁ~…何のことだか…  貴方…人違いしてるんじゃないですかねぇ~…?  それじゃあ――私は急いでるんでこれで…」 「…おい。」 信はようやく絞り出すことの出来た上ずる声でそう答えると 後ろも見ずにそそくさとその場から立ち去ろうとする… しかし信の肩を掴むその手は信を離してはくれず―― 「信…」 「ハァ~~~………なんだよ…」 信はその場から逃げるのを諦め… 盛大な溜息と共に、肩を落としながら渋々後ろを振り返る… するとそこには形のいい眉を顰め…仏頂面をした仁の顔があり―― 「…答えろ。何でお前が此処にいる?」 「あ”?俺が此処にいちゃ悪いかよ…此処は歓楽街だぞ?  ちょっとキャバクラにでも寄って――羽目を外そうと思っただけだ。  あといい加減離せ。」 信は不機嫌な様子で振り向きざま、肩を回す様にして仁の手を振り払うと 改めて仁の方に向き直る 「…で?お前こそ俺に何の用だよ…」 「付き合う。」 「………は?」 「…羽目外すんだろ?俺も付き合う。」 「っ何で俺がお前なんかと…てかお前今仕事中だろっ?!  いいのかよ?こんな時間から酒飲んで――」 「…何で――俺が今仕事中だと思う?」 ―――あ、ヤベ… 「ッそれは――」 信は思わず迂闊な事を口走ってしまった自分に焦り… どもりながら視線を泳がせる… するとその泳いだ視線の先に 仁の背後から人のよさそうな顔した中年の男性が 笑顔で仁に近づくのが見え―― 「よっ!真壁…お・ま・た・せ!」 バシンッ!と仁の背後から近づいた男性は思い切り仁の背中をブッ叩き―― 仁はその顔を一瞬痛そうに顰めながら後ろを振り返った 「ッ!神崎さん…」 「真壁お前…駄目じゃないか…持ち場を勝手に離れちゃ…  …そちらの方は?」 神崎と呼ばれた男性は仁の肩に手を置きながら信の方に視線を送る 「…コイツは斎賀 信…  俺の――中学の頃から友人です。」 「へぇ~…」 「………ハハ、」 ―――“友人だった”――だ…ボケ… 信は複雑な顔をしながら苦笑を浮かべる… そこに仁が口を開き―― 「…ところで神崎さん。榎戸組の方は――」 「…それが全っ然ダメ…  やっぱアレだけじゃ決め手に欠けるからなぁ~…」 「そう…ですか…」 「それより真壁。」 「はい。」 「お前はもう…ここで上がっていいぞ。」 「え…いいんですか?」 「!?」 ―――オイ…まさか… 「ああ…後は俺が署に戻って報告とかやっとくから――  お前はそこの友人と一緒に飲みに行ってくるといい…  折角会ったんだ…積もる話とかあるだろ?」 「はい。」 「!なっ、」 ―――いやいやいやいや…俺はねーからっ、、    コイツと積もる話なんかねーからっ!! 「じゃあまたな。真壁…  …あんま飲みすぎんなよ?」 「はい。」 ―――はいじゃねーよっ!お前ふざけんな…っ、    持って帰れよこの3ポイントっ!ボッシュートしろよっ!! 信の内心の叫びと焦りなどつゆ知らず… 神崎は仁と信をその場に残して去っていき―― 「…さて…と…それじゃあ――  付き合うぞ。信。お前が羽目を外すの。」 「………ハァ…」 ―――葵に――電話しないと…    今日は…帰りが遅くなるって…

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