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デート再び…?

―――…でも――結局何にも解決してない… 葵は複雑な顔をしたまま、信の用意した朝食を眺める すると信がコーヒーにミルクをかき混ぜながら怪訝な表情で口を開き… 「…どーした?葵…お前さっきからなんか様子が変だぞ?」 「えっ?!そんな事ないよ?」 「…そうか?ならいいんだが…」 信は葵の言葉に首を傾げながらもコーヒーを一口啜り―― 葵はそんな信をチラリと見た後 目の前のエッグベネディクトにフォークを伸ばす ―――信を諦めないって決めたのはいいんだけど――    結局問題は何も解決してないっていう…    “椿”っていう人が何者で――    信にとってどういう存在なのか…っていう最大の問題が… マフィンの上にカリカリに焼けたベーコンが乗り… 更にその上に乗る白身で綺麗に包まれた半熟卵をフォークで割ると 中からトロッ…とした黄身が溢れ… 葵は徐々にベーコンやマフィンに伝い落ちていく黄身をぼんやりと眺める ―――いっその事信に「椿って誰?」って    ストレートに聞ければ話は早いんだけど――    怖いんだよ…聞くのが…    信の口から――俺の予想通りの答えが返ってくるのが… 皿の上にまで(したた)り落ちた黄身が ゆっくりと皿の上で広がりながら白いマフィンに()みていく… 『信…椿って誰?』 『実は…前から気になってた人で――』 ―――…やだ。聞きたくない。 葵は全力で心の声に耳を塞ぎ―― 神妙な面持ちで黄身が滴るベーコンを口へと運ぶ… そこに信がサラダにフォークを刺しながら躊躇いがちに葵に尋ねた 「なぁ…ところで葵…  俺は昨日――どうやって此処に帰ってきた…?」 「え…覚えてないの…?」 「それが全然…  タクシーに――無理矢理誰かに押し込められたような気はするんだが…」 「う~ん…」と信がシャクシャクとサラダを咀嚼しながら首を傾げ―― 葵がそんな信を呆れた様子でジト目で見つめると 溜息交じりにその口を開いた 「…昨日信凄く酔ってて…  誰だか知らないけど背の高い…感じ悪い人に支えられながら帰ってきたよ。」 「…背の高い――感じ悪い人?」 「そう…確か――信その人の事を『ひとくん。』って呼んでた。」 「…………………~~~~~ッ!?ブフォッ、」 「ちょっ、信汚い…、」 「わ”…わ”る”い”っ……ゴホッ、ゴホッ…、ってか“ひとくん”てっ、」 信は葵の口から久々に聞いたその呼び名に(むせ)… テーブルナプキンで口元を押さえながら噴き出してしまったサラダを片付ける 「そう呼んでたよ?…それに…随分と親しそうだった…」 「んなワケあるかっ!ああもう最悪……最悪だぁ~…」 信は相当仁を“ひとくん”呼びしたことにショックを受けたのか 両肘をテーブルに突き… 両手でテーブルナプキンごと顔を覆いながら小さく(なげ)いた 「…今度から酒…自粛しないと…  てか何やってんだよ俺…“敵”の前で泥酔とかありえねー…」 「え…あの人――信の“敵”なの?」 「ああ……敵も敵。超“天敵”。  葵もアイツには気をつけろよ?要注意人物なんだから…」 「…分かった。」 ―――敵…なの…?    “ひとくん”の方は大分信を気遣っていたようにも見えたけど… 葵は黄身が浸みたマフィンを口に頬張りながら 今までになく落ち込んだ様子の信を見つめる… するとそこに今まで落ち込んでいた信が顔からパッと両手を離し そのままパンッ!と両手で自分の太腿を叩くと 意を決したように葵の事を見つめ―― 「そうだ葵!今日、会社休みだから――  また何処かに二人で出かけるか!」 「!…デート?」 「!ああそうだデート!  天気もいいし…今日はちょっと遠出して海の方にでも――」 信がそう言いかけた時… テーブルの上に置いておいた信のスマホがブブブブブ…と振動しだして… 「ッ!?」 ―――親父…? スマホ画面を見れば、そこには久米 勝治郎の名前が表示されており―― ―――こんな時間に一体なんの… 信は一抹の不安を覚えながら…緊張した面持ちで通話ボタンを押した…

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