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価値。
「ン”-…ン”ぅンーッ、」
「ハイハイ。無駄なてーこーは止めて大人しく歩こーねぇ~」
「…お?」
新人に腕を掴まれ…引きずられるようにして倉庫内を歩く葵の姿に
今まで倉庫の中でなにがしかの作業をしていた数人の男たちが気づき
その手を止め、興味深げに葵たちの方へと近寄ってくる
「…よう、お帰り!早かったな。
ところで――ソイツって例の懸賞金のヤツ…?」
「そ。偶然にも“俺が”街中でコイツを見つけたんすよぉ~…
いやぁ~…俺ってばやっぱ持ってるんすかね!」
「あはは!」と
自分が葵を見つけたことを強調しつつ新人は高らかに笑い
まるで獲ってきた獲物を見せびらかす様に葵を男たちの前に引き立たせると
葵の背後からヌッ…と嫌がる葵の顎を片手で掴み…
怯えた様子の葵の顔を無理矢理男たちの方に向かせながら
意地の悪い笑みと共にその口を開いた
「ところで……今からコイツの撮影を執り行いたいんすけど…
上のスタジオって空いてます?」
「スタジオ?ああ…空いてるよ。
…さっきまでロシア女に使ってたから撮影機材もセットも
まだそのままの状態で残してあるからすぐにでも使えるぞ。」
「マジっすか!ラッキ~!じゃあ早速使わせていただきますねぇ~」
そう言うと新人は再び嫌がる葵を引きづりながら
倉庫内の階段をウキウキした様子で昇っていき――
その様子を眺めていた数人の男達が
撮影に参加したいのか見物したいのか…
卑下た笑みを浮かべながらノロノロと新人の後に続いて階段を上っていく…
そこに誠も二階へ上がろうと階段に足をかけたその時
「真壁。」
「…?」
一人の男が少し焦った様子で誠に近づくと
周りを気にしながら小声で誠に話しかけた
「なぁ…お前たちがたった今連れ帰ってきたあの少年…
ついさっきビラに印刷されてた交渉用のアドレスにアクセスしてみたんだが
どうやら削除されてて…
しかも仲介役である“組合”のホームページからも
あの少年の懸賞金に関する情報が一切削除されているっぽいんだが…
どうする?」
―――なんだ…懸賞金出したヤツが日和 ったのか…?
それとも金が惜しくなったか…
「…その事――江口さんには?」
「江口さんはお前たちが帰ってくる前に
お得意様の一人である“M氏”に急な呼び出し食らって此処を出て行ったっきり
今連絡つかねんだわ…どうするよ…」
困り果て…狼狽えている様子の男を前に
誠は口元に手を添え…暫く渋い顔で考え込んでいたが
やがて顔を上げると、何事もなく口を開いた
「…ほっとけばいい。」
「え?」
「懸賞金が取り下げられたのは残念だが――
だからってあの少年の利用価値が無くなったワケじゃない。
お前も見ただろ?あの少年の顔…あれだけ上玉なら――
AVで稼がせるなりそっち関係の店に売り飛ばすなりすれば
懸賞金以上の金は余裕で稼げるだろうし…
なにより向こうが懸賞金を取り下げたって言う事は――
もうあの少年を懸賞金出したヤツの元に返してやる必要もなくなったという事だ…
それが何を意味するかって言うと――」
「…あの少年を俺たちがどう扱おうが――俺たちの自由って事か…」
「その通り。
ま、あの少年にはせいぜい頑張ってもらおうじゃないの。
自分にかけられた懸賞金以上の金を叩きだすまで…」
―――でもまあ…その前に仁が助けに来るかもだが…
誠がクッ…と口角を上げ
カーゴパンツにしまってる葵の携帯の存在を確かめるように布越しに撫でると
再び階段を上り始めた…
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