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来るって信じてる。
「ン”-ンッ、ン”ゥンーッ!」
―――やだ…やだ…やだ…ッ!
新人に引っ張られ…いやいやながら葵が階段を上り終わった先には
妙に色鮮やかな紅で塗りつぶされた扉が見え…
葵は腰を引き、足を踏ん張りながら何とかそれ以上行くことを拒むが――
引っ張る新人と、いつの間にか卑下た笑みを浮かべながら
葵たちの後ろから着いてきていた数人の男達の内の一人が葵の肩を両手で掴み…
「ほらほら…後ろが閊 えてるんだからちゃんと歩こ~ねぇ~…」
と囁きながら葵を後ろから押す為に、葵はそれ以上抵抗する事が出来ず
嫌がる葵の身体は意思に反してジリジリとその紅い扉に向かって歩き続ける…
―――助けて…信助けて…っ、
涙で視界がぼやける中…葵が頭を振り、足を踏ん張って最後の抵抗を試みるも
男たちはそんな葵を嘲笑いながら扉の前まで引きずり…
新人が「ジャ~ンッ!」とわざとらしく言いながらその扉を開けると
まず葵の目に飛び込んできたのが壁にかけられた卑猥な道具の数々と
部屋の中央に鎮座する白くて大きなベッドで――
「オラ、さっさと中に入れよ。」
ドンッ!葵は背中を押され――
葵はつまずきながら部屋の中に押し込まれるが
葵はすぐさま身体を反転させ、扉に向かって逃げようと駆け寄るも
その身体は呆気なく扉の前に居た男の一人に抱き留められ…
「コラコラ、何処へ行こうというのかね?」
「あははムスカー!」
それどころか葵は抱き留めた男に肩で担がれ――
クスクスと笑われながら勢いよくベッドの上へと放り投げられた
「ッ、ふ、」
バフンッ、、と葵の身体はベッドの上でバウンドし、衝撃で息が詰まる…
しかしそんなのお構いなしに葵は慌ててベッドから起き上がろうとするが
そこに先ほど葵をベッドに放り投げたやつが透かさずベッドの上へと上がり込み
ベッドの上で足掻く葵の身体を押さえつけると、新人に向け声をかけた
「なぁ木下…コイツの口塞いでるダクトテープ…取っていい?」
「いいっすよ?
やっぱ鈴木さんも嫌がる声とか聞く方が盛り上がるタイプっすか?」
「当たり前だろ~?それにコイツの口…どっちにしろ使うしな。」
鈴木はそう言うと葵の口を塞いでいるダクトテープを
一気にベリッと引っぺがす…
すると葵は間髪入れずに叫び始め――
「ッ…助けて…信…っ!」
「おーおー…何ソレ…好きな男の名前?可愛いなぁ~…
こんな所で叫んでも…その信君とやらは助けには来ないよ?諦めな?」
鈴木はクスクスと笑いながら葵の頬を撫でる
―――来る…信は絶対来てくれる…!
キッ!と葵が鈴木を睨みつけると
鈴木は「おお…怖い怖い。」と言いながらもうっそりとその目を細め…
まるで葵の肌の感触と反応を楽しむように微笑みながら葵の頬を撫で続ける
―――来るよ…信は来てくれる…
だって信だもん…
俺を絶望から…“あの人”から救ってくれた信だもん…!
だから今度も絶対に助けに来てくれる…!
葵がギュッと瞳を閉じ…
自分の頬を撫でる男の手から逃げる様に顔を逸らしたその時
部屋の扉がキィ…と開き――
「よう、準備は?」
「あ、真壁さん…今準備の真っ最中っすよ。」
もうベッドを囲むようにして
ライトやマイクといった撮影機材は用意されていたのだが――
それでも木下はどうもマイクの位置や傘の位置などが気に入らずに
しきりに動かして調整している
「…真壁さんも撮影に参加を?」
「いや?俺は見てるだけで。」
そう言うと誠は近くにあったパイプイスを引きずり
ベッドの近くに置くと、ドカッと座って腕と足を組む
そこに今までカメラ位置を調整していた木下が顔を上げ――
「よし!準備オッケー!
さてとそ・れ・じゃ・あ――
もう撮影始めちゃうから早速ソイツの服、脱がせよっか!」
「オッケ~」
「待ってました~」
そう言うと他の男達も
まるで蜜に群がる蟻みたいにワラワラとベッドの上の葵に群がり始め――
「っやだ…ッ、触らないでっ!嫌だったら…っ!信…
助けて信っ!」
―――ん…?のぼる…?
そういやコイツ…確か車ん中でもそう叫んでたような…
葵の口から出たその名前に…
誠の眉間に皺が寄る
「へへ……まぁ~だ信君に助けを求めるの~?健気だねぇ~…
どんなに叫んでもその信君は助けに来ないって言ってんのに…」
「なに?コイツまだ好きな男が助けに来るってホンキで思ってんの?
いいねぇ~…そういうの好きよ?
好きな人が助けに来るって信じながら他の男に犯され――
最後には助けが来ない事に絶望しながら自ら腰振って快楽堕ちすんの。
サイコーにいいシチュエーションじゃ~ん…
こりゃいい画が撮れますぜぇ~?」
「だろ~?」
「あはははは!」と周りの男たちは高笑いをしながら
ベッドの上で身を捩って暴れる葵の服を脱がしにかかる…
そこに突然バンッ!部屋のドアが勢いよく開かれ
一人の男が血相を変えて部屋の中に飛び込んできた
「た…大変だっ!真壁さんっ!」
「…どうした?」
「男二人が倉庫に侵入してきて…、ッ、
そいつらが今、下で暴れてて…っ!」
「…ッ!」
―――信だ…!
葵の瞳が一気に輝きを取り戻す
「なんだよ…たった二人だけろ~?だったら大した事ないんじゃ…」
木下がナイフで葵の白いシャツのボタンを二、三個弾き飛ばしながら
気だるそうに口を開く…
しかし飛び込んできた男は尋常ではなく怯えていて――
「それがっ、、そいつらアホみたいに強くて…、ッ、
もう俺達だけじゃどうにも…ッ、」
「…分かった。」
誠は椅子からゆっくりと立ち上がると
ドアに向かって歩き出す
「俺がそいつらの相手をしてやる。」
「真壁さん…!」
「お前たちは構わずそいつの撮影を…
あと念のため俺が出て行ったあと、此処の鍵かけとけ。」
―――もし此処に侵入してきたのが仁ともう一人…俺の知ってるヤツなら――
相当厄介なヤツだろうしな…
誠はフッ…と口角を上げて微笑むと
再び男たちに身体を弄られ――
信の名を叫びながら暴れだした葵を残して部屋を後にした…
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