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思わぬ助っ人。

「…お前……ソレは…?」 誠が木下の握る血に濡れたナイフを険しい表情で見つめる… するとそこにキキキキキィッ!と 複数台の車が倉庫の正面に停まった音が聞こえ―― ―――仲間が帰って来たのか…?    いや違う…コレは―― 「木下!すぐに裏口から出るぞ!」 「りょっ!」 何かを察した誠が木下を連れ、慌てた様子で裏口に向かって駆け出す 「ッ!待てっ!」 しかしそれを見た仁が咄嗟に二人を止めようとするが―― 「誰か…、誰か来てっ!!  死んじゃう……信が死んじゃうっ!!」 「ッ!」 二階から聞こえてきた悲痛な叫び声に… 何より『信が死ぬ』というワードに二人を追いかけようとした仁の足は まるでその場に縫い留められたかのようにピタッと止まり―― 「ッ、」 ―――信…っ! 仁は二人を追うのを諦め… 即座に踵を返して二階へと続く階段を駆け上がると 正面の紅い扉を迷いなく開ける 「ッ!?」 すると部屋の中には複数人の男たちが呻き声を上げながら床に倒れ… 更に部屋の右端付近に目をやると その場に泣きながらへたり込むようにして座る裸の葵が 青ざめ…ぐったりとしている信の上体を抱える様にして抱きしめており… 「ッ、信ッ!!」 力なく横たわる信の姿に仁は焦り… 血の気の引く思いで二人の元へと駆け寄るが―― 二人がいる床の上に小さな血溜まりが出来始めているのが見え… 「…ッ、コレ…まさか信の…?」 「っどうしよう…、ッ、ねぇどうしよう…っ!」 葵もまた…信と引け劣らないくらいに真っ青になりながら取り乱し… 信の血で真っ赤に染まった両手で必死に信の身体を掻き抱きながら 縋るような目で仁を見つめる… そこにカンカンカンカンッ…と 複数の人間が階段を駆け上がってくる音が聞こえ―― 「ッ、」 ―――まさか…こんな時に新手か?!今は一刻も早く信を此処から連れだし…    病院に連れて行かなければならないって時に…っ! 仁は信の事で焦る気持ちをグッと抑え… 部屋の扉を鋭い視線で見つめながら身構えるが―― ガチャッ!と勢いよく開け放たれたドアから姿を現した人物を見た瞬間 仁は思わず絶句した… 「ッ貴方は…っ、」 「…話は後だ。井上、河野…すぐに信を連れて最上(もがみ)の所へ。  幸いにも此処からだと一番近い。」 「はっ、」 「わかりました。」 二人の男性を引き連れ、その場に姿を見せた痩躯の男性…久米は 信の様子を見て一瞬その表情を曇らせると 即座に傍に居た井上と河野に指示を出し… 井上と河野はすぐさま信の元へと駆け寄り 狼狽え…泣きながら信を離すことを拒む葵から少し強引に信を引き離すと 信を抱え、急いで部屋を出て行く 「ッ待ってっ!信を何処に連れて行くのっ?!」 葵は今の自分の姿を(かえり)みず…すぐさま信の後を追おうとするが その腕を久米に掴まれ… 葵はパニックになって暴れ出す… 「ッ離してっ!信が…っ、」 「…落ち着きなさい葵君…信の事なら心配いらないから…  それよりもほら…コレを羽織って…そのままじゃ風邪をひく。」 そう言うと久米は着流しの上に羽織っていた藍色の長羽織を 裸のままの葵の肩にそっとかけ―― 未だに混乱している様子の葵の肩を優しく抱くと 葵をなだめながらドアに向かってゆっくりと歩き出す… 「…何処か怪我は?」 「っない…です……それよりも信は…?」 「…信なら俺の信頼のおける医者の元へと向かわせた。  なに…信の事を任せた井上も河野も医療の心得があるから大丈夫だ。  俺達もすぐに信の後を追う事にしよう…  …キミも――我々と一緒に来るかい?真壁 仁君。」 「ッ!?何故……俺の名を…」 不意に昇竜会の組長である久米の口から自分の名前が出たことに その場に茫然と立ち尽くしていた仁は驚きを隠せず―― 思わず久米の顔を凝視する… しかし久米はそんな仁の反応を意に介することなく 何処か(うれ)いを帯びた瞳で仁の事を見つめ返すと 静かにその口を開いた… 「…知っているとも…理由は言えないがね…  それよりどうする?俺達と一緒に――」 「…行きます。」 仁が食い気味に答える 「…そうか…  なら約束してもらえるかな?」 「…?」 「これから先――何を見聞きしようとも他言無用に願うと…」 「…」 久米からの提案に…仁はその表情を険しくしながら一瞬考え込むが―― 今は何よりも信を心配する気持ちの方が上回り… 考えるよりも先に、仁は了承の言葉を口にする 「…分かりました。約束します。」 「…それが聞けて安心した。それじゃあ二人とも…私の後に着いてきなさい。」 そう言うと久米は葵と仁を連れ、この部屋を後にした…

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