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自責。
ザァァァー…
「………」
熱いシャワーが頭上から降り注ぐ中…
葵はシャワーの前で俯き…排水溝に流れていく紅を虚ろの瞳で見つめる
『!信…っ、ダメッ!!』
『ッ!馬鹿っ、来るなっ!!』
「…ッ、」
虚ろな瞳からは涙が溢れ出し…
瞳から零れ落ちた涙は大量の水滴にと共に下へと流され――
やがて紅と混じり合って渦を巻き…やはり排水溝へと吸い込まれていく…
―――…俺が…、
『あ…おい…、ッ、怪我は…?』
『ない…ないよっ!』
『そっか……ならよかった…、ッ、』
「うっ…」
涙と水滴で視界がぼやける中…
紅で染まり…震える自分の両手を葵は悲痛な面持ちで見つめる…
―――ッ…俺があの時……信に駆け寄りさえしなければ…っ、
左手を右手で包み込むようにして握りしめ…
徐々にお湯で流されていく紅を見つめながら
葵は歯を食いしばる…
―――分かっていたハズなのに……
信が強いって分かっていたハズなのに…っ、
俺が余計な事をさえしなければ……
信は一人であの状況を何とか出来ていたかもしれのに…ッ、
なのに…!
「ふっ…うぅぅ…、ッ、うぅぅぅ…っ、」
葵の口から遂に耐え切れずに嗚咽が漏れだし…
葵は青ざめながらギュッと瞳を閉じる…
―――なのに俺が…っ!
俺が信を庇おうとしたばっかりに…逆に信が俺を庇ってあんな…、
あんな………
「ああ……ぁああ”ぁああ”あ”あぁあ”ぁぁぁあああっっっ!!!!」
葵はまだ信の血がこびりついている両手で顔面をかきむしる様に押さえながら
心の底からの叫び声を上げる
―――俺のせいだ…っ!
信が怪我したのは全部俺の…ッ、
「ッごめ…、グスッ、ごめん信…っ、うぅ…、
おれの……俺が余計な事したせいで…ッ、俺のせいで…ッ!うあ…あぁあ…、」
慟哭は止まず…
自責の念に苛 まれながら
葵は両手で顔を覆ったままその場にゆっくりとしゃがみ込むと
ただひたすらに嗚咽を漏らして泣きじゃくる…
「グスッ、、…ご、めんなさい…、ッ、ごめんなさい…っ!
俺が悪いの…グスッ…全部俺が…っ、」
―――捕まったのも
信が怪我をしたのも…
全部全部俺のせい…
「っだ、から…、
死ねって言うなら俺が死ぬから…っ、だから…!
連れてかないで……
お願いだから信を連れてかないで…っ、」
ザァァァー…と…激しく床を叩きつけるシャワーの音だけが響く中…
誰に言うワケでもない葵の願いが――
シャワーの音と共に小さく霧散した…
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