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安堵。
散々泣いて…
少しだけ気持ちが落ち着いた葵が脱衣所に戻ると服が用意されており…
葵がその服に着替え、バスルームから出ると
外で待っていた井上に連れられアンティークの家具が並ぶ客室へと案内される…
するとそこには既に中央のテーブルの席に着き…出された紅茶を飲む久米と
白いカーテンが揺れる窓辺に立ち…
険しい表情で外を眺めている仁の姿があり――
「…斎賀さんの手術が終わるまでの間…コチラでお持ちください。
それでは私はこれで…」
「………」
そう言うと井上は白い両開きのドアを両手で閉めながら部屋を後にし
後に残された葵は気まずげにその場に立ち尽くす…
そこに久米が目の前の席に手を向けながら葵に声をかけた
「…そんなところに突っ立っていないで…
そこにかけたらどうだい?この紅茶…なかなか美味しいよ?」
「…」
久米からの誘いに…葵がおずおずと席に着くと
久米が残りのティーカップに紅茶を注ぎながら葵に尋ねる
「…少しは――落ち着いたかい…?」
「………はい。」
「そうか…それは良かった。はい、どうぞ。
…キミもどうだい?」
久米が紅茶を葵に差し出しながら背後で窓の外を眺める仁に声をかける…
しかし仁は一度チラリと久米と葵を見た後「…結構。」とだけ答えると
すぐに視線を窓の外に戻してしまい…
「…ハァ…気を張り詰めるのも結構だけど――
そんなところで外を睨みつけてても…何も状況は変わらないと思うがね。」
「……」
呆れた様子の久米の言葉に…仁は再び久米の方を見ると
軽く溜息をつきながら席に着き――
「…なら……頂きます。」
「フフ…どうぞ。」
そう言うと久米は葵の分と一緒に既に用意していた紅茶を仁に差し出し
仁がそれを受け取ると
三人は特に会話もなく紅茶を飲みながら信の手術が終わるのを待った…
※※※※※※※
三人が客室で信の手術が終わるのを待ち続ける事約二時間…
客室のドアがキィ…と開き――
そこに姿を現した井上が席に着く三人に安堵の表情を見せながら
その口を開いた
「…たった今――斎賀さんの手術が無事に終わりました。」
「本当っ!?」
葵がホッとした表情を見せながら思わず席から立ち上がり――
仁も久米も緊張の糸が切れたかのように
肩の力を抜いて安心したような表情を見せると
あたりを包んでいた緊迫した空気は一気に和らぐ…
「ええ…今は病室の方に移り――ベッドで安静にして眠っています。」
「ッ良かった信…っ、本当に良かった…!」
葵は胸元を押さえ…泣きそうになりながらその場に立ち尽くし…
久米が井上を見つめながら「もう面会は出来るのか?」と聞くと
「会うだけなら問題はないと最上さんが…」と答え
「そうか…なら早速――信の顔を見に行くとするかな?
キミたちはどうす――「行くっ!」
久米が席を立ちながら葵たちにどうするかを尋ねようとした瞬間
葵は間髪入れずに答え…仁も無言で頷くと三人は客室を後にし――
井上の後に続いて信が居る病室の前まで辿り着くと
白い横開きのドアをガラ…と開け、三人は中へと入る…
するとベッドの上には眼鏡を外し…青白い顔をして眠る信の姿と
そのすぐそばでカルテの確認をしている
40代くらいの白衣を着た男性の姿があり…
「…最上 」
「!久米…」
「信の様子は?」
「大分安定している。これなら――一週間以内には退院出来るだろう…」
「そうか…良かった…」
白衣の男性…最上の言葉に
久米もようやく心の底から安心出来たのかホッと一息つき…
葵は急いで信の傍まで近づくと、眠っている信の顔を心配そうに見つめながら
その頬にそっと触れる…
「信…」
「…彼は今…麻酔で眠っているが――もうじき目を覚ますだろう…
ところで久米。」
「ん?」
「お前自身の怪我の具合を含めて――少し話をしたいんだが…いいか?」
「…構わんよ。葵君と真壁君。」
「!」
「…」
「俺はちょっと席を外すが――
二人は俺の代わりにじっくりと信の寝顔でも眺めていてくれ。
それじゃあ行こうか最上。」
そう言うと久米は最上と共に部屋を出て行き
葵と仁は信の眠るベッドを挟み…お互い静かにその寝顔を見守った…
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