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M氏。
―――加納 輝彦 …
久米の表情が苦悩で満ちていく…
―――三年前…信、王凱 らと共に若頭候補にまで上り詰め――
俺が最も気にかけていた若頭候補の一人…
信の様に頭が切れ――王凱の様に度胸も腕っぷしもある…
それ故――次の昇竜会の若頭は加納で決まりではないかと
他の幹部たちの間で噂されるほどの人物だった…
しかしある時…
そんな加納に“裏で麻薬の密売に関わっている”との情報が入り――
『そんなハズはないっ!何かの間違いではっ?!
何で俺が麻薬の密売なんか…っ、』
『そうですよ親父っ!加納の兄貴がそんな事するハズがないっ!』
『…しかしな信…
現にこうして加納が麻薬の売人と思われるヤツとの交渉を収めた映像が…』
『ッそんなもの…今時いくらでも細工の仕様が――』
『…おや……それではこの私が――この映像に細工を施したとでも…?斎賀君…』
『ッ…副本部長…』
『…それにしても困りますなぁ~…加納君…
いくらキミが今一番組長の信頼厚い若頭候補とはいえ…
ウチの経営するホテルのカジノで
昇竜会が禁止している麻薬の取引を行うとは…』
『違うっ!!何かの間違いだっ!!そもそも俺はこの日ホテルになんか――』
『…それを……証明出来る者は…?』
『っ……それは――』
『ないでしょう…?』
『ッ…』
『親父…!』
『…とりあえず今は…この話はここだけという事にして…
加納に対する処罰は保留という事にしてはもらえないだろうか…?』
『…それは流石に…甘すぎるのでは…?
現にこうして取引の現場を収めた映像があるというのに保留とは…
この事が他の組員達にバレたら示しが――』
『御手洗……分かっている。だが俺にも少し…考える時間が欲しいんだ。
頼む…』
『……組長が…そこまで仰 るのでしたら…』
―――その時はひとまずそれで落ち着いたが…
後日…今度はクラブで
加納と売人とが密会している様子を収めた映像が流出し――
これを機に…俺ではもう庇いきれなくなった加納は昇竜会を破門…
本人は最後まで否定をしていたが
映像が決め手となりその結果が覆る事はなく…
それでもなお加納の無実を訴える信の熱心さに押され
俺はもう一度だけ加納に会って話を聞く事にしが――
しかし話を聞く当日…加納は待ち合わせ場所に姿を現さず…
気になった俺と信が加納の住んでいるマンションに訪れてはみたものの
部屋は既にもぬけの殻…
その後行きつけのバーやクラブ…
加納が現れそうな場所は虱潰 しに探したが――
加納の行方は掴めず…
加納はまるで…神隠しにでもあったみたいに
忽然と俺達の前から姿を消したのだ…
「加納…」
―――あれから三年…
まさかこんな形で加納の名前を再び耳にする日が来ようとは…
未だに加納の行方を捜しているらしい信はどう思うだろう…
久米がスマホを握りしめたまま何も言えずに立ち尽くす中…
井上の気遣うような声が受話口から届く
『親父…』
「ッ…それで――そのリストに加納の行方を示す何か手掛かりは…」
『いえ…残念ながら…しかしこれは“M氏への納品リスト”…
もし加納が今も生きているとするなら――
M氏に“納品”され…今もM氏の元に居る可能性が…』
「ッ!なら…っ!その名簿かリストにM氏の住所は…ッ、」
『…それも残念ながら…』
「ッ、」
―――加納…っ!
ミシ…と久米の握るスマホが嫌な音をたて…
久米のその表情にスッ…暗い影が差すと
久米は皆に背を向け――
小声で…しかし普段聞いた事のないような低い声で井上に声をかけた
「…井上。」
『…はい。』
「…例の倉庫で捕まえたバウンティハンターはどうしてる?」
『…地下室に繋いであります。』
「…では……そいつらを締め上げて――
M氏について何か聞き出せる事があったら洗いざらい吐かせろ。
…わかったな?」
『…分かりました。では…』
プツッ…と通話は切れ…
久米は携帯を懐にしまうと、難しい顔をして黙り込む…
―――加納…あの時はお前を信じてやれず…助けてやれなかったが――
もし今もお前は何処かに囚われ――苦しめられているのだとしたら…
今度こそ俺が…お前を助け出してやるからな…!
※※※※※※※※
「あっ、あっ、あっ…いいっ!、ッ、そこいい…っ!」
広くて丸いベッドの上で…
白い大蛇が大きく口を開き…菩薩に巻き付いている絵を背中に彫っている男が
ベッドの上で仰向けに寝そべる男の上に跨 り
下からガンガンと突かれながらよがり、喘ぐ…
「はっ…はっ…ココが、クッ、いいのかい…?ええ?
淫乱なヤクザさんがよぉ…っ、」
「あっ、ああっ!いいっ!そこもっと…、ッ、もっと突いて…、
ゴリゴリしてぇっ、」
「ははっ、相変わらず淫乱だなぁ~…テルちゃんは…
アンタホントーに元若頭候補?」
「ッ!し、らない…、ッ、そんなの知らない…っ!
いいからもっと突いてっ、、激しくして…ッ!」
「ッ…仰せのままにっ!」
「あぁあっ!」
グチュリッ…と結合部から泡立った精液が溢れ出すと
ベッドの周りで椅子に座り…酒を飲みながらこのショーを眺めていた観客達から
「おおっ!」と歓声が上がる
「いやはや…彼もすっかり雌に堕ちたようで…
人間…変われば変わるもんですなぁ~…」
「最初の頃は暴れて…とても手がつけられなかったそうですが…
今では自らケツマンコにチンポ咥えて喜ぶ淫乱に仕上がったようで…
ホント、ここのオーナーM氏の調教の手腕には恐れ入りますよ…」
「ところで――お聞きになりましたかな?」
「何をです?」
「近々――また何処かのヤクザ者を仕入れ――雌に堕とすんだとか…
しかも今度は組長クラスだとか…」
「何っ?ソレは本当ですか?!
だったら今度はそのヤクザ者が雌に堕ちていく過程を
しっかりとこの目に焼き付けなければ…」
「ははっ!」と観客たちは笑い――
ベッドの上では一人の男が激しく揺さぶられ――
その虚ろな瞳から一筋の涙を零しながら小さく呟いた…
「の…ぼる…、」
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