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カスタードクリーム。
「あー…」
―――暇だ。
時刻は翌日の午後14時を回り…
信はベッドから上体を起こして背もたれに寄りかかり…
昨日の雨が嘘かの様に晴れ渡った外の景色をぼんやりと眺める
―――…そーいや…こんなに暇な時間を過ごすのは何時ぶりだ?
意図しない形ではあるが…
信は久しぶりに訪れた何もすることのない時間に正直戸惑う
―――一応梶 君には昨日のうちに
体調不良を理由に数日休むとだけ伝えてはあるが――
やっぱ不安だな…こーして何もせず…ただぼんやりとしてんのは…
性に合わない。
信は前髪をかき上げながらサイドテーブルに置いてあるスマホを手に取ると
フォトを開いてこっそりと撮った葵の寝顔を眺める
―――葵…今頃何してんだろうな…
葵の寝顔に信の顔は自ずと綻び…
フッ…と微笑みながら画像を見続ける…
―――アイツ…今朝はちゃんと朝食食べたんだろうか…
いや、それよりも…
昨日は寒かったから俺(湯たんぽ)がいなくても
ちゃんと温 かくして一人で寝れたかのどうか…
そっちの方が心配だ…
信の瞳が少し寂し気に揺らぎ…
信の親指がそっと画像の中の葵の唇を撫でる
「葵…」
―――お前に逢いたいよ…
葵の顔を見つめながら
つい感傷に浸ってしまっている自分に信は思わず自嘲気味な笑みを零す…
―――あ~…らしくねぇ~なぁ~…こんなの…
やっぱ病院ってダメだわ…辛気臭い気分にさせられるうえに――
人の心を弱くする…
「ハァァ~~~…」
信は盛大な溜息を吐き出すと
天井を見上げ…スマホを持っている方の手の甲を額に乗せる
―――葵…
今すぐお前に逢いたい…
瞼を閉じ…
信が待ち人の笑顔を思い描いたその時
「のぼる…?」
「ッ!?」
信がハッ!となって声のした方を振り向くと
開けっ放しのドアのところに…
ケーキでも入っていそうな箱を持った葵が立っていて――
「ッ葵…!」
「えへへ…来ちゃった…
めーわくだった…?」
「っ…そんなワケあるかっ!早くコッチに来い!」
「ッ!…うんっ!」
葵は嬉しそうに微笑むと
手に持った箱を大事そうに抱えながら信の元まで近づく
「よく来たな葵……丁度お前に――
逢いたいと思っていたところだったんだ…」
「本当っ?!………嬉しい…、ッ、
俺も――本当は朝一に信のところに来たかったんだけど…
朝ちょっとゴタゴタしてて…」
「…ゴタゴタ?っていうか――お前一人で来たのか…?
おやっ…、ッ、…久米さんは?一緒じゃないのか??」
信が不思議そうにドアの方を見やるが人影はなく…
「うん…あのね?忠のお父さんは急用を思い出したとかで
今朝家を出て行っちゃって…
それで俺が信の所に行こうとしたら
忠と智美が今日学校あるのに俺と一緒に着いていくって聞かなくて…
その事で…五十鈴 さんが……笑いながら怒って……
とても……怖かった……です…」
「っそ…そうか…」
―――あの人……怒らすとおっかないからな…
葵は余程怖かったのか…
思い出しただけでその顔は見る間に青ざめていき…
信はそんな葵に同情の眼差しを送る…
「と…ところで――その大事そうに抱えている箱は?」
「!これ~?んふふ……ジャーン!シュークリーム6個入り~!」
「おおっ!」
見ると箱の中にはスタンダードだが
大きめのシュークリームが6個入っており――
「フフ…信、一緒に食べよ!」
そう言うと、葵がウキウキとした様子でベッドの近くの椅子に腰を下ろし
早速箱からシュークリームを一個取り出すと
ニコニコと微笑みながらそのシュークリームを信に向けて差し出し――
「信。」
「ん?」
「ハイ!あ~~ん…」
「………」
突然の葵の行動に…
信の思考が一旦停止する
「どうしたの?信……ホラ、あ~んして?」
「え…いや…あの…葵さん…?」
「あ~~ん。」
「………」
信の戸惑いを葵はガンとして無視し…
葵は微笑みながらシュークリームを信の口元に差し出す
「信、あ~~ん。」
「ッ……あ~ん…」
そんな葵についに折れた信は、照れながらも渋々口を開き――
ハムッ…
信は覚悟を決めてそのシュークリームを一口頬張る
すると…
「あっ、」
中のカスタードクリームが想像以上に多かったのか…
信が口にしたところからトロッ…とカスタードクリームが溢れ出してしまい…
「あっ、あぁっ、」
葵は慌ててもう片方の手で溢れ出るカスタードクリームを受け止めるが
それでも受け止めきれず…掌から溢れたカスタードクリームが
ゆっくりと葵の手首を伝い始め――
「あっ…あっ…」
葵はもう…どうしたらいいのかが分からずに狼狽え…固まっていると
信がカスタードクリームを溢れさせている葵の手をそっと掴み…
その手を自分の方へと引き寄せ――
「あ…」
ペロ…
葵の手首を伝い始めたカスタードクリームを…
信は何の躊躇 いもなく舌で舐めとる…
「のっ…のぼる…っ?!」
「ん…?」
ヌル…っと…
カスタードクリームを纏いながら信の舌がゆっくりと葵の肌を這い…
「…ッ、」
その妙に官能的な光景と――
カスタードクリームと一緒になって手首を這う信の熱い舌の感触に…
葵の背筋にゾクゾクとしたものが這い上がる…
「っ信…、ッ、も…いいから手……離して…、ッ、」
「なんで~…勿体ないだろ…?」
そう言うと今度は…
まるで挑発でもするかのように上目遣いで葵の目を見ながら
信はゆっくりと掌のカスタードクリームを舐めていく…
「~~~ッ、」
ペロペロと…
信は丹念に葵の掌や指の間を舐め――
ヌルヌルと掌や指の間を這う信の舌の感触に
葵は顔を真っ赤にしながらその身体をビクビクと震わせる…
「ッ、信…っ!もうホントいいから、ッ、」
「だ~め…ちゃんと綺麗にしないと…」
葵は手を引いて逃げようとするが――
変なスイッチが入った信はそれを許さず…
ピチャピチャと音を立てながら葵の手を舐めまわす…
そしてついには葵の指先をパクッ…っと口に含み始め――
「のぼるっ、」
チュパ…ピチャ…と辺りに湿った水音を響かせながら信は葵の指を舐め…
まだ昼間だというのに室内には妙に卑猥な空気が漂い始める…
そこに突然…ツカツカと小気味いい靴音が聞こえ――
「コラッ!」
「い”でっ!」
パコンッ!と――
最上 が手に持ったカルテで信の頭をブッ叩きながら
呆れた様子でその口を開いた
「イチャつくんなら余所でやってくれないか?」
「だったら――今すぐ退院させてもらえます?」
「出来るか!馬鹿っ!!」
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