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行方不明者。

「…何か分かった事は…?」 久米が事務所を訪れると、中では井上と河野を含めた組員数人が ダンボールの中の資料を漁ったり、パソコンで何やら作業をしており その中で井上がたった今プリントアウトし終えた紙をプリンターから引き抜くと その紙を持って久米に声をかけた 「親父。」 「…井上…何か分かった事は?」 「それが――コレを見て下さい。」 「…?」 井上は手に持っていた紙を深刻そうな顔をして久米に渡し 久米は怪訝そうにその渡された紙を見やる 「コレは?」 「ここ数年で――昇竜会と、その傘下を含めた組員達の中で  “行方不明”になっている者達を(まと)めたリストです…」 「行方不明……」 久米の表情が一瞬ピクリと動く 「…確かに――  行方不明になっている者達については俺も気にかけているところではあるが…  今は加納の行方を――」 「親父……実はそのリスト――  M氏の納品リストの中にあった名前の中から見つけ  抜粋(ばっすい)したものなんです…」 「ッ!?何だと…?」 久米が改めて紙に目をやると… そこには昨日話した加納を筆頭に―― 確かに何人かの覚えのある名前が並んでおり… 「ッ…そんな…、」 計13人の名前を前に… 久米は思わず絶句する… 「親父…」 「ッ……って事は何か…?今まで行方不明だと思っていたヤツは  加納も含め全員――  M氏に“納品”されてたって事か…?」 「恐らくは…」 「ッ、」 あまりの出来事に…久米は肩を震わせながら暫く紙を見つめると その表情を険しくしながら重い口をひらく… 「………井上。」 「はい。」 「…バウンティハンターどもはM氏について……何か吐いたか…?」 「…いえ。どうやらM氏と直接会って交渉していたのは  江口と呼ばれるリーダー格の男一人だけのようでして…  他はM氏とは会った事もないと…」 「…それで――その江口とやらは?」 「分かりませんが――  どうやら斎賀たちが倉庫に乗り込む前に…  M氏に呼び出され――何処かに出かけていたようです…」 「ッ……そうか。  だったら次はバウンティハンターどもから江口の事を聞きだし――  江口の行方を追うぞ…  リーダー格ならもうとっくに倉庫が襲撃を受けたことは知っているだろうから  なるべく早くに見つけないと……遠くに逃げられちゃ敵わん。  頼んだぞ。井上…」 「…分かりました。」 そう言うと井上は部屋から出て行き―― 今までやり取りを黙って見ていた河野が、今度は入れ替わりで久米に声をかけた 「…親父…」 「河野……どうかしたか?」 「信……若頭には加納の兄貴の事を伝えなくてもよろしいので…?」 河野は何処か非難めいた眼差しで久米の事を見つめ―― 久米の方も河野が何を言いたいのかが分かっているがために その眼差しを真っ向から受け止める 「…アイツはまだ病み上がりだ…  今加納の事を話して――余計な心配をかけたくはない。」 「ッ…しかしっ!アイツはずっと兄貴の事を信じ…  周りからどう思われようが加納の兄貴の事をずっと探していたんですよ?!  親父だって…その事は知ってるでしょう…っ!?  せめて…生きているかもしれないって事をアイツに――」 「…死んでいるかもしれない。」 「ッ、」 久米の冷たい一言に…河野の表情も凍る… 「…今分かっている事は――“加納がM氏に納品された”という事だけ…  生死不明…そんなまだ何も分かっていない状況で――  今の信に加納の事を話して…アイツがどう思うか想像出来ない程  お前も浅慮(せんりょ)ではないだろう…?」 「…ッ、」 久米の言葉に…河野は歯を食いしばりながら俯き… 久米がそんな河野の肩に手を置きながら優しく諭す様に話を続ける 「…お前も信の補佐として…信に隠し事は辛いだろうが…  今はまだ…アイツの為にも黙っていてやってくれ…頼む。」 「……分かりました。でしたら俺――  M氏に納品された人達の中に何か共通点がないか探ってみます。」 「ああ頼む。」 河野はそう言うと早速デスクに戻って作業を始め―― ―――そういえば… 後に残った久米が口に手を当て… もう一度井上が渡したリストに目を向ける ―――このリストの何人かは加納も含め…    失踪する前に御手洗と何らかのトラブルを起こしていたような… 久米の中で…嫌な推測が持ち上がり―― それを確かめたくて、久米は近くの河野に声をかけた 「河野。」 「!はい。」 「ちょっと――調べて欲しい事があるんだが…」

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