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スマホの行方。

「そういや葵…」 「…なに?」 信が病室で葵とイチャついていた事にご立腹だった様子の最上(もがみ)に 賄賂(シュークリーム二個)を渡してその場を収めると 最上は「…今回だけだぞ。」と言いながら受け取ったシュークリームを手に ちょっと嬉しそうな様子で部屋から出て行き―― 後に残った信と、手を洗って戻って来た葵が 今度は普通にシュークリームを食べながら話しをしていると 信がふと気になった事を口にする 「今朝――俺お前に何度か電話やメール…LINEなんかを送ったのに  全部スルーしてたな…」 「え…?」 パクッ…と―― 信は年甲斐もなくちょっと不貞腐れた様子でシュークリームを一口頬張りながら チラリと葵の方を見てみると 葵は少し驚いた様子で、キョトンと信の事を見つめており―― 「あっ…いや~…別に俺は気にはしていないんだがな?  LINEの既読スルーとかも全然…全然気にしてないぞ?    ただ――せめて折り返しの電話くらいは欲しかったかなぁ~……なんて…」 「ハハッ…」と… 信は取ってつけたような笑みを浮かべながら焦って言いつくろうが―― 内心葵に今言った事を後悔する ―――ッ、バカか…俺ッ!    これじゃ“気にしてる”って言ってるよーなもんじゃねーか…っ、    ああホラ…葵も困った顔してるし…    どーすんだよこの空気!恥ずかしい…、ッ、 「ッ…」 信はもう…急激に気恥ずかしくなり―― 葵から気まずそうに視線を逸らすと、もう一口シュークリームを頬張る… するとそこに葵が言い辛そうに信を見つめながら口を開き―― 「あ……あのね…?信……その…、ッ、寂しい思いさせてごめんね?」 「ブフッ!、ゴホッ、、ゲホッ、、、  あ”っ…あ”お”い”…ゴホッ、さびしいて…っ、  ッ――違うんだ葵…っ、俺は別に寂しかったとかそういうワケじゃ――」 「っで…でもね信…聞いて?…実は俺――  信からもらったスマホ……盗られちゃって…」 「………え、」 ―――盗られた…? 葵のその一言に信は思わず葵の顔を凝視ししながら 躊躇いがちにその口を開く 「盗られたって……何時…?」 「それが昨日…車の中に押し込められた直後に背が高くって(いか)つい…  確か――仲間の人から“真壁さん”って呼ばれてた人に盗られて…」 「真壁さんっ?!」 突然の真壁姓に…信の脳裏には一瞬仁の顔が過るが―― ―――あ……誠さんの事か…!…そりゃそうだよな…    ――でも…盗ったのならなんで… 「…葵…ソイツは――その場では捨てなかったのか…?  葵から取り上げたそのスマホを…」 「…うん…何故か捨てずに自分のズボンのポケットにしまってた…」 「…そうか…」 ―――不可解な…何で誠さんは葵のスマホを捨てなかったんだ…?    バウンティハンターならスマホでの位置情報がバレるの恐れ――    真っ先に攫った相手のスマホを捨てそうなもんなんだが…    まあ…なんにせよ…    そのお陰で、俺達は葵を助け出す事が出来たワケだけども… 信は誠の意図が読めずに 暫く難しい顔をして考え込む… しかし ―――…ん?待てよ…?    …て事はまだそのスマホを――    誠さんが持っている可能性が…? 思い当たったその考えに…何故か信の動きはピシッ…と止まる ―――そしてそのスマホを――今もまだ誠さんが持っているのだとしたら…    今朝俺が葵に送ったLINEの既読はつまり―― 信の顔色が徐々に青くなっていく… ―――誠さんが読んだ…と…? ポフッ… 「ッ!信っ?!」 突然身体を反転させ――枕に顔面を埋める様にしてベッドに倒れ込んだ信に 葵が慌てて声をかける 「どうしたの!?信…、ハッ…もしかして傷口が――」 「…殺してくれ。」 「えっ?!」 「いっそ殺してくれ…ッ、俺にはもう……耐えられない…っ!」 「ちょっ…どーしちゃったの信っ!ねぇっ…ねぇってばぁっ!」 突然枕に顔を埋めたまま動かなくなった信に―― 葵はただただ狼狽える事しか出来なかった… ※※※※※※※ (葵、今何してる?) (ご飯ちゃんと食べたか?忠にセクハラとかされてないか?  もしされたら俺に言えよ?説教しとくから。) (葵…今日コッチに来られそうか?いや、無理なら別にいいんだが…) (あー…今更何だがその…昨日は突然あんな事して悪かった…  お前が――不快に思ってなきゃいいんだが…) (なぁ葵…LINEの返信無理そうなら――せめて電話をくれないか?  お前の声が聞きたい…) (…やっぱ無理。声だけじゃなくて…  お前に逢いたいよ…葵…) 「プッ…」 「…なにニヤけてるんすか?真壁さん…  気味悪いっすよ。」 「…いや……可愛いなぁ~…って…フフッ、」 「…?」

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