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汚れ。
「…もうお眠か…?」
「……うん…」
時刻は20時を過ぎ…
信と葵が出された夕食を食べ終わった後、葵は一人風呂へと入り…
上がった後はパジャマ代わりに用意された患者衣に着替えると
ベッドの上で上体だけを起こしている信の腰に抱きつくようにして
葵は信の傍 で横になり…
信がそんな葵の頭を優しく撫で…
二人はベッドの上でこの何もない時間を幸せに感じながら過ごす
そんな中…
葵が信の腰にしがみついたまま不安げにその口を開いた…
「…ねぇ…のぼる…」
「…ん…?」
「信は――大体気づいているんだよね…?
俺が……、ッ、何で自殺しようとしていたのかを…」
「………まあな。」
「ッ、だったら――
信は汚いって………思わないの…?
俺が――今まで誰かに………、ッ、「葵。」
「ッ!」
信が葵の言葉を遮って葵の名を呼び――
葵は一瞬その肩をビクンッ…と震わせながら
恐る恐る信の顔を見上げると…
信は呆れたような笑みを浮かべながら葵の事をみつめていて――
「…人間って言うのはな、葵…
“目で見たものが全て”なんだよ…
例えお前が誰かに何かされて――
お前自身が自分の事を汚いって思い込んでいたとしても…
俺の目にはお前は何時も通りの綺麗で儚げな美人に見えるし――
何処が汚れているか何て分かん。」
「ッ、でも…、」
「そもそも“目に見えない部分で汚れてるっていう意味”なら…
俺の方がお前より何百倍も汚れてる…気にすんな。」
「ッ!?そんな事ないよっ!信はいつ見てもカッコイイし汚れてなんか…」
「ホラな?」
「え?」
「それはお前に俺の“汚れ”が見えていないだけ…
大体“内面”の汚れなんてもんは誰が見ても分かんないし気にも留めない…
そんな誰が見ても分からないもんを“汚れてる”だのなんだの
気にするだけ無駄だ。やめとけ、そんなの…」
「っだけど……」
葵は咄嗟に身体を起こして反論しようとするも
信の人差し指が葵の唇をピトッ…と塞ぎ――
「言ったろ?気にすんなって…
大体俺は――
“今の”お前が好きなんだ…
汚れてるとかそんなん…俺にとっちゃどっちにしろカンケーねーよ。」
「ッ!?のぼる…………いま…なんて…?」
「あー…なんかきゅーにねむくなってきちゃったなー…
というワケで寝るわ。お休み。」
「っちょっと待って信!
今…言ったよね?俺の事好きって言ったよねっ?!ねぇ…ねぇ…っ!」
「ん~……どーだったかなぁ~…」
「言った!絶対言った!!
ねぇ信……もう一回言って?ねぇ…ねぇってばあ…っ!」
葵は自分に背を向けて寝たふりをする信の肩を揺すりながら
「好きって言ってよ…」とねだり続け…
この30分後…
遂に堪忍袋の緒が切れた最上が二人の元に怒鳴り込んで来るのであった…
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