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情報。

『よう…信…  元気してたか?』 受話口から聞こえてきた誠の声に… 信の身体と思考が一瞬ピキッ…っと硬直するが―― 「…刺された事もあるけれど、私は元気です。それでは――」 信は遠い目をしながらそのまま通話を切ろうとする… しかし受話口の向こう側に居る人物はそれを許さず―― 『…刺された事を魔女宅っぽく言うのやめれ。  あとシレッと電話切ろうとすんな。』 「…なんでジジは最後も言葉ではなくニャーと鳴いたのか…」 『知るか。考察サイト見ろ。  …それより信…話が――』 「俺はねーです。」 誠からの突然の電話に信はもはや嫌な予感しかせず… さっさと話しを切り上げたい信は初めから誠との会話を拒否するが 誠はそんな事お構いなしに話を続ける 『まあまあっ!そんな冷たい事言いなさんなって…  この話はお前にとってもゆーえきな事かもしんねーんだからよ。』 「…有益…?」 ビジネスマンとしての(さが)なのか… 信はその言葉に思わず反応し―― 誠の口角が微かに上がる 『そーそー。俺らがどんな“仕事”をしているか…お前も知ってるだろ?』 ―――仕事って… 「…人攫いでしょ?賞金付きの…  それが――なにか?」 信は眉間を指で押さえ…「ハァ…」と深い溜息をつきながら誠に先を促す 『…まあそう焦んなさんなって。そんでさぁ…話し戻すけどこーゆー仕事柄――  “情報が金になる”って事を知ってるもんだから“本業”とは関係なくても  “何時かは使えるだろう”って事で  いろんなところから色んな情報を仕入れたりするワケよ。  どこそこの企業が実は国の目を盗んでテロ支援国に物資を横流ししてるだとか  何時何分にどこぞのホテルで政治家達による秘密の会合が開かれるだとか…』 「はぁ…」 『ンでだ……お前――  6年前の菊花町駅構内で起きた通り魔事件について…調べていただろ…?』 「ッ!どうしてソレを…、」 唐突に誠の口から6年前の出来事に触れられ―― 信の表情は険しくなる… 『俺らバウンティハンターはな  金絡みの人探しや情報提供には一通り食いつくんだよ。  当然6年前お前が裏社会で情報提供を呼び掛けた  “菊花町駅構内通り魔殺人事件”についても  懸賞金の額が良かったから食いついたワケだが――    で、だ……お前今この事件に関する有力な情報には3千万支払うんだって?』 「………」 どこか相手の出方を探るような誠の物言いに… 信も疑心たっぷりの反応を誠に返す 「……ええ…その情報が本物なら――ですけど…  それで?誠さん…貴方何か――犯人に繋がる様な情報をお持ちなんですか…?」 『…まあ……“実行犯”に繋がる“何か”は持ってるかもな。』 「ッ!?それは――」 “実行犯”という言い方が気になるものの――それでもこの6年… ずっと自分が探し求めていたものを持っているという誠の言葉に 信が興味を示さないハズもなく… 「それは一体どういった内容の情報で…?  いや…それよりも何故――“今”になってその情報を俺に…」 6年が経ち……“今”になって情報を持っているという誠に どんなに喉から手が出るくらい欲しい情報でも…流石に信も警戒心を抱く… そこに誠が意外な事を口にし―― 『“今になって”――というのは…  “今がこの情報の切り時”だと思ったからだよ。そもそも6年前では――  この情報が事件に繋がるかどうかも怪しかったからな…』 「…怪しいって……それって不確かな情報って事ですか…?だったら――」 『まあ待てって!“6年前では”って言っただろ?』 「…じゃあ“今”は違うって言いたいんですか?」 『まあそんなところだ。  ところで信……懸賞金の件なんだが――』 「…まずはその情報を聞いてから判断を…」 『違う。金は要らない。』 「―――――――え…?」 『金は要らない。』 「ッ、じゃあ……」 『その代わり――』 “只より高い物はない”… 信の喉が知らずにコクリ…と鳴る ―――3千万の代わりに……この人は一体俺に何を要求する気なんだ… 緊張感だけが高まっていく中… 誠が静かに口を開いた 『俺のせいで仁が厄介ごとに巻き込まれた時に…助けてやって欲しい…』 「………………は?」 予想外すぎる誠の言葉に…… 信の思考も停止する 『頼めるか?』 「え……は……?いやぁ~……そんな事急に言われても……  俺じゃどうしたらいいのか…」 『またまたぁ~……お前――  昇竜会の若頭なんだろう…?』 「ッ!?」 ―――なんで…っ、 昇竜会内部以外では極秘に扱われているハズの自分の立場が… さも当たり前のように誠の口から出てきたことに信は驚きを隠せず… 絶句して声も出せない様子の信の反応に 受話口の向こう側の誠はフッ…と苦笑を浮かべる… 『…そー驚きなさんなって……言ったろ?  “何時かは使えるだろう”から…いろんなところから情報を仕入れてるって…  まあお前が昇竜会の若頭であることを知ったのは偶然だったんだが…  ――で……どーするよ…?もし仁を助けると約束をしてくれるのなら――  “その時”が来た時にお前に証拠の写真と俺が掴んだ情報をくれてやるよ。  タダで。』 「……その口ぶりから察するに――  まるで仁は“確実に厄介ごとに巻き込まれる”前提で  話が進んでいるように思えるのですが…」 『まあ…巻き込まれるだろうな。アイツ捜一の警官だし…それに現に――  お兄ちゃんである俺が今ちょっとした渦中にいるからな。』 「え…」 『兎に角だ。コレが約束できない様なら――話はなかった事に…』 「ッ!分かりました。約束します。  …何時“その時”とやらが来るのか分かりませんが――  それで……橘先生を殺した犯人に繋がる情報が手に入るのなら…、  喜んで…、ッ、」 『………』 信は徐々に俯きながら震える自分の手を見つめ―― その手が微かに歪んでいるように見え… そこでようやく自分が泣いていることに気がつき―― 信はスマホを握ってる手の甲でグッとその涙を拭う… そこに誠が信の様子を伺うように口を開き―― 『…交渉成立?』 「ええ……」 『…良かった。なに――安心しろって。  もしこの一か月の間に何も起こらなかったら――  約束通り…お前に証拠は全部渡すから…  6年待てたんだ…たった一か月くらい待てるだろ…?』 「…まあ……待つのは問題ないんですけど…  ところで誠さん……貴方一体何に巻き込まれて――」 『!おっと……もーこんな時間か…  それじゃ信、仁の事頼んだぞ!じゃあな。』 「ちょっ…」 信が食い下がろうとするも… 誠からの通話はそのまま切れてしまい―― ―――あの人……今度は一体何やらかしたんだ… 信は色んな意味で呆然しながら 暫く黙ってスマホ画面を眺め続けた…

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