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水族館デート4

その後もイルカたちとトレーナによる一糸乱れぬパフォーマンスが続き―― 葵はそのつど喜んだり驚いたりと 今まで信に見せたこともないような色んな表情を隣に座る信に見せ… 信の方もそんな葵につられて まるで童心にでも返ったかのように葵と一緒にショーを楽しみ―― 心の底から葵と一緒に笑い合う… そんな中…いよいよショーも終盤へと差し掛かったその時 ステージ上に再び女性スタッフが現れると、ヘッドマイク越しに話をし始めた 『え~…突然ですがこれからお客様の中からランダムで三人!  素敵なイルカちゃんたちとの触れ合いタイムにご招待したいと思いま~す!』 女性スタッフのその言葉に――観客席が一斉にザワつきだす… 『――ですのでっ!  選ばれた方はスタッフが案内しますので――  ステージの方までお越しくださ~い!』 女性スタッフがそう言うと―― 今まで水中で泳ぐイルカたちの姿を映していた ステージ中央に設置されている大型スクリーンの映像がパッと切り替わり… 観客席に座る観客達の姿を映し出し―― 『さて……最初に選ばれるのは誰かなぁ~…?』 嬉々として女性スタッフがマイク越しにそう呟くと スクリーンには左右…あるいは上下に 流れるようにして次々と観客達の姿が映し出され… 観客たちは固唾を飲み込みながら スクリーンに映し出される自分たちの姿を見守る… そして次の瞬間、女性スタッフが『最初の一人は~…この方だっ!』と言いながら 勢いよくスクリーンに手を向けると スクリーンにはツインテールの小さな女の子の姿が映し出され… 「………」 女の子はポカーン…とした様子で スクリーンに映し出された自分の顔を不思議そうに見つめ―― その隣に座る女の子の母親らしき人が喜んだ様子で女の子の頭を撫でながら しきりに女の子に向け…何かを話しかけている様子がスクリーンに映し出される 『え~…それでは選ばれた女の子のお母さん。  女の子と一緒にステージの方まで来ていただけますか?  スッタフが案内しますので…  さて――次は誰かなぁ~?』 再びスクリーンには観客席の映像が流れ始め… 観客席はまたもザワつきだす… そんな中…次に映し出されたのは―― 「え…?私…?」 と…音声は出ないもののそう言っているかのように口元を動かし… 自分を指さしながら驚いた様子で辺りを見回す年配の女性で―― 『はいっ!ではそちらのご婦人の方!スタッフが案内しますので――  ステージの方までお越しください。  ではでは――いよいよ最後の一人は誰かなぁ~…?』 スタッフが額に手を当て… わざとらしく観客席を見回すような仕草をステージ上でしてみせる… すると今まで流れるように観客の姿を映していたスクリーンの中の映像が 徐々にその速度を落としていき―― そして… 『最後の一人は~~……この方だっ!ジャジャンッ!』 観客をゆっくりと映していた映像は ある一人の少年をスクリーンの中に映しだすとピタッと止まり… 「え…」 「これって――前の人じゃね…?」 信たちの周りが再び(ざわ)めきだす… 「…?」 ―――…今度はなんだ…? 今まで周りの空気そっちのけで隣の葵と話し込んでいた信が視線を上げると… ステージ中央の大型スクリーンには 今も信の方を見ながら微笑む葵の横顔が映し出されていて―― 「ちょっ…葵…っ!」 「ん?なに…?…………あっ!」 信に名を呼ばれ…葵も何事かと顔を上げると―― 正面中央の大型スクリーンに 今まさに驚いている様子の自分の顔が映っており… 「え……えぇっ!?――俺…っ?!」 『――ではそちらの――少年…?少年……だよね…?  もうこの際何でもいいやっ!兎に角そこの綺麗な子っ!ステージまでドゾ~!』 「の…のぼる……」 「行ってこい。ここで見ててやるから。」 「でも…っ、」 「イルカと触れ合えるなんて滅多にない機会だぞ?いいから行ってこい!  ここでバッチリ写真と動画も撮っといてやるから!」 そう言うと信はスマホを取り出し――戸惑っている様子の葵に向けると… 先ずは一枚、パシャッ!とその顔を撮る 「!もうっ…信…っ!」 「ほら!早く行けって!此処で待ってるから…」 「むぅ~……絶対に俺置いて…何処にも行ったりしないでよ…?」 「フッ…俺がお前を置いてどっか行くワケねーだろ?だからホラ…」 「………分かった…じゃあ行ってくる…」 葵は席から立ち上がりながら渋々握っていた信の手を離すと―― ステージに向けて俯きがちにトボトボと歩き出し… ―――まったく……まだまだ子供だなぁ~…アイツは… 信は苦笑を浮かべながら葵の後姿を見送た

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