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水族館デート7
イルカショーが終わり…
信は先ほど撮ったイルカが葵の頬にキスをしている動画のシーンを葵に見せながら
二人は肩を並べてゆっくりと館内を歩く
「…良かったな、葵……イルカとキスが出来て…」
「うん!…いきなりレインコート着せられて――
イルカにチューされた時は流石にビックリしたけど…いい思い出になったよ。
信…今日は此処に連れてきてくれて――本当にありがとう!」
少し照れながらも葵は信に向けて満面の笑みで礼を言い…
再び自分とイルカが一時停止で映っている画面に目を移すと
嬉しそうに目を細める…
そんな中――二人は巨大水槽の前に差し掛かり…
信がチラリと巨大水槽に視線を移すと
そこには一頭のシロイルカが二人の事をジッ…と見つめていて…
「…葵、見てみろ。」
「…ん?」
信に言われ…葵もその場で足を止めて視線を上げる…
すると水槽の中でシロイルカが、まるで葵においでおいでと言っているみたいに
身体ごと頭を振っている姿が見え…
「うわぁ……シロイルカだ…!キレ~…」
葵は吸い寄せられるようにしてシロイルカのいる水槽へと近づき――
信もそれに続いてゆっくりと水槽へと近づいていく
「俺――テレビでしか見た事ないよ、シロイルカ…」
「…そうか。」
葵はその瞳を輝かせ…
目の前のシロイルカに何かを期待するかの様な視線を送る
「プク~しないかな…」
「ぷく~…?」
「そ。プク~。」
「…なんだそれ。」
「信…見た事ない?プク~…
俺CMかなんかでシロイルカのプク~見てさ…
一度でいいから生でシロイルカのプク~が見たいかなって思ってて…」
「???」
そもそもプク~とは何ぞやと…
信が首を傾げ――再びシロイルカに視線を向けようとしたその時
「ッ!信見てっ!プク~したよ!」
「!?」
葵が益々その瞳を輝かせ――
興奮したように水槽を見つめたまま信の肩を掴んで揺すり…
信が何事かと葵の視線を追って水槽に視線を向ければ
水槽の中でシロイルカが窄 めた口先から気泡のわっか…
いわゆるバブルリングを作り出し――葵に向けてフッと吹き出した直後で…
「うわぁ…うわぁ…うわぁ…ッ!
見て見てのぼるっ!プク~!プク~っ!!」
徐々に大きく広がっていくバブルリングを見ながら…
語彙力が何処かに吹っ飛んだ葵が
「これがプク~だよ!」と言いたげに強く信の肩を掴んだまま
興奮気味にシロイルカの作ったバブルリングを指さし…
本当に子供にでも戻ったみたいに無邪気にはしゃぎながら
満面の笑みを信に向ける…
「見た?信!」
「ああ見たよ。」
「凄いよねぇ~…水の中であんな空気の輪っかが作れるなんて…
俺泳げないし……水の中で息とか止めてらんないから想像つかないよ…」
「…泳げないのか?」
「うん……あ、でも――ビート板とか使えば何とか…?」
「ビート板なっつ…!小学校の時以来だぞ…名前聞いたの…」
「むぅ…どーせ俺は信みたいに運動神経良くないですよーだ!フン…」
そう言うとさっきまでの無邪気な笑顔は一変…
葵は頬を膨らませ――不貞腐れた様子でシロイルカの方を見る…
するとシロイルカはまるで葵を慰めるかのように再びバブルリングを作り出し――
「葵。」
「ん?」
カシャッ!
葵が振り向きざま…
いつの間にか葵から2,3歩後ろに下がっていた信が
手にしたスマホで、丁度バブルリングをプワ~…っと口から吹き出したシロイルカと
ちょっと驚いてる様子の葵のツーショット写真を撮り…
早速その写真を葵に見せると――
葵の顔は再び花が咲くかのように綻ぶ…
「カメラに特化したスマホだから…よく撮れているだろ…?」
「うん…」
「さっきは悪かった。別にビート板を使うのを悪いと言ったわけじゃ…」
「クスッ…分かってるよ。そんなの…ちょっと怒ったフリをしてみただけ。
それにしても今日は本当にここに来られて良かったな…」
「シロイルカの生プク~も見れたしな。」
「ッ…うんっ!
あ…見て信。向こうに売店があるよ?」
「お…ちょっと見てくか。」
「うん!…あ、プク~見せてくれてありがとね。バイバイ。」
葵がシロイルカに小さく手を振ると
シロイルカもうんうん頷くようにして頭を振って見せ…
信も葵に合わせて微笑みながらシロイルカに手を振ると
二人は売店に向け、足を進めた
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