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気づいてた。

葵side 時刻はもうじき19時半に差し掛かろうかというところ… テーブルの上には見た目も華やかな豪勢な料理が並ぶ中―― 葵を除くアラサー男性3人が 料理そっちのけで過去の話で大いに盛り上がりをみせる 「そーいや信ってさぁ…高校ん時モテてたよなぁ~…。」 「まあな。」 「うわっ…コイツやだわ~…否定しねーし…」 「…実際目に見えてモテてたからな。信は…」 「…信と同じくらいモテてたヤツがなんか言ってるし…やだわぁ~…この二人…  ま、お前らは容姿もよくって――  おまけに定期テストとかでも常に学年の1位と2位を争ってたもんな。  そらモテますわよ…  ハァァァ~…世の中ってふこーへー…」 「…お前だってモテてただろうが。」 「…あ”っ…?皮肉か?喧嘩売ってんのかあ”あ”ん”!?  お前らとツルんでたお陰で女子が俺に話しかけてくる半数以上の理由が――  『コレ…斎賀君に渡してもらえる?』とか…  『真壁君ってどんな子がタイプなのか今度聞いといてよ。』とかだぞ。  コレを『モテてただろうが』とか言っちゃう信君マジ鬼畜。」 ソレを聞いて信とひとくんは同時に「ククッ…」っと笑い―― 義人さんとひとくんはクリュッグを飲みながら 酒を飲まない信は赤のノンアルコールワインを飲みながら… さしずめプチ同窓会のようなノリで信たちは高校時代の話に花を咲かせる… その一方で…俺はというと―― 「………」 当然…そんな信たちの話の輪の中に入る事が出来ず… 無言で鴨のコンフィをむぐむぐと食べながら―― 一人…何とも言えない疎外感を味わう羽目に… ―――あー…なんかこの感じ懐かしーなぁ~(棒)    まるで高校の休み時間の時みたいだぁ~…    周りはグループ作って楽しそうに盛り上がってんのに――    俺だけ時間潰すのに…    いっつも一人で机に突っ伏して…寝たふりとかしてたっけ…        あ。なんか悲しくなってきた。 「ハァ~…」 「…葵?…なんかゴメンな?俺達だけ盛り上がっちゃって…  退屈だろう…こんな話…」 「ッうぇ…?そんな事ないよ?信の高校時代の話が聞けてとっても楽しいし…」 ―――これは本当…    信の事を知ることが出来るのは――どんな事でも嬉しい… 「…そうか…?」 信がフッ…と俺に微笑みかけ… 俺も信に笑みを返しながらジュースの入ったグラスに手を伸ばし―― そのままトロリとしたクリーム色の液体を口の中へと流し込む… すると口の中には桃の柔らかい甘みが広がり―― ―――…やっぱコレって――    お酒――だよねぇ… 俺は流れ込んできた液体をコクン…と喉を鳴らして飲み込むとグラスから口を離し… 既に三杯目となるその“桃のジュース”をマジマジと見つめる。 ―――甘いし……確かにジュースっぽくはあるんだけど…    飲んだ瞬間に身体がちょっとポワン…ってなるこの感じ…    “あの人”に時々飲まされていたワインとかのお酒と一緒だから覚えがある…    もっとも――“あの人”が俺に勧めてくるお酒やジュースの場合には    何時も“俺をおかしくする為の何か”が混ぜられていたから…        こんな風にただポワンとするだけじゃ済まなかったんだけどね… 「………」 グラスの中で揺れる液体に… 苦々しく眉間に皺を寄せている俺の顔が映り込む… ―――そう……ポワンとするだけじゃ済まない…        “あの人”が勧める飲み物を飲んだ後は何時もそう…    身体がだんだんと熱くなってきて…    どうしようもないくらい奥の方がジンジンと疼きだし…    その疼きのせいで次第に何も考えられなくなってきて――    最後には泣いて縋るんだ…    “あの人”に…    『助けて』って…    それから―― 「…ッ、」 俺は思い出したくもない事を思い出しそうになり… ソレを振り払うかのように 手に持っていた三杯目の“桃のジュース”を一気に飲み干す… すると突然… 隣に座る信の手がサラ…と俺の顔にかかる前髪を軽く退け―― 「!なっ…なに…?のぼる…」 「いや…お前さっきから暗いし――ココに皺が寄ってるから…  どこか具合でも悪いのかと思って…」 そう言うと信は心配そうに俺の顔を覗き込みながら 俺の眉間に軽く指で触れる… 「…もし具合が悪いようなら……今日の所はもう――」 「ッ、大丈夫だよ信っ!俺全然具合悪くなんかないし…  ただちょっと――ゴホッ、ゴホッ、、  さっき一気に飲んだ桃のジュースの果肉が喉につかえちゃっただけだよ…  だから気にしないで…?ケホッ、」 「しかし…」 俺がわざとらしく咳き込むと、信は俺の背中を優しく撫で… 俺は自分の事を心配してくれる信にちょっとの罪悪感を覚えながらも 背中を撫でる信の掌から伝わる温もりに安心し… 不意に思い出してしまった“あの人”への嫌悪感も スゥ~…っと消えていくような気がして―― 少しだけ気持ちが楽になる。 「…ありがとう信……でももう――本当に大丈夫だから…」 「…そうか?あんま無理はすんなよ?」 「うん。心配してくれてありがとう。」 「ああ…」 「…お客様。ジュースのおかわりはいかがですか?」 「あ、お願いします。」 スタッフが空になった俺のグラスを下げ―― 信がノンアルコールの赤ワインに口をつけようとしたその時… 「なぁ…ところでお前ら――風間君って覚えてる?」 急に何かを思い出したかのように口を開いた義人さんから質問に 信とひとくんが首を傾げる。 「風間君…?」 「…どの風間だ。」 「ほらぁ~!高校ン時廊下に張り出される定期テストの上位20名の順位表で――  何時も1位2位を独占しているお前らの下にいただろーが…  “万年3位の風間君”!」 「ああ!確かいたなぁ~…そんなヤツ。」 「……スマン。覚えがないんだが…」 「…ああうん…お前はそーゆーヤツだよな…信以外には興味ないっていう…  あんだけお前と信に色々とちょっかい仕掛けてきてたっていうのによぉ…  ホント、風間君も報われねーよなぁ~…」 「…?」 「まあいいや…その話は置いといて――実は俺…  この間関西の方に、あるイベントの打ち合わせの為に行ってきたんだけど…  その打ち合わせ場所のレストランで偶然風間君の事目撃しちゃってさぁ~…」 「…ジュースのおかわりをお持ちいたしました。」 「ありがとう。」 俺はスタッフから4杯目の“桃のジュース”を受け取ると―― 早速そのジュースを飲みながら嬉々として再び話し始めた義人さんの話に 静かに耳を傾けた…

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