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風間君。

信と葵がレストランを出たあと… 義人は今まで信の座っていた席へと移動し―― クリュッグに軽く口をつけたあとに、正面に座る仁に話しかけた 「なぁ…風間君の話なんだけど…」 「なんだ……その話――まだ続ける気か?」 「さっきは信とお嬢ちゃんがいた手前……言い出せなかった事があるんだよ…」 「…?弟の方は兎も角…信にも聞かせられない様な事なのか?」 仁は怪訝そうに義人を見つめ―― 義人は普段では絶対しないような深刻そうな顔をしながら 言い辛そうにシャンパングラスを軽く揺らす… 「…実はさ……風間君の話題の中で俺――  風間君が余りにも変わってて驚いたって話し、しただろ?」 「…ああ言ってたな。確か…  風間君の外見が高校の時のがり勉ダサ眼鏡スタイルから――  ホストか…あるいは頭にヤのつくご職業みたいになっていて驚いたと…  それがどうかしたのか?」 「そう…ソレなんだけどさぁ…」 義人は手に持っていたクリュッグをグイッと(あお)り 「プハァ~…」と長い息と共にグラスをタンッ!とテーブルに置くと 仁の方にキッとした視線を向ける 「なぁ仁…」 「なんだ?」 「お前――前まで信の事…色々と探っていたよな?」 「ああ…」 「…隠す気ナシかよ…この職権乱用ストーカーめ…」 「…隠す必要がないからな。……で?」 「ハァ~…でさぁ…お前――信の事を探ってるうちに…  アイツが裏社会と何か繋がりがあるとかそういう話…聞いた事なかったか…?」 「………」 義人からのその問いかけに―― 今まで表情一つ変えずにフォアグラのテリーヌを切っていた仁の手が ピタッ…と止まる… 「…何故――そんな事を俺に聞く?」 「いや、さ……レストランで俺の席の近くに  風間君がヤクザ風の男達数人を引き連れ席に着いたんだけども…  その時に俺…風間君とヤクザ風の男たちが話しているのを偶然耳にしてさぁ…」 「…何を聞いたんだ?」 仁は微かに眉間に皺を寄せ―― ジッ…と義人の事を見つめながら次の言葉を待つ… すると義人は一呼吸置くと、思いつめた表情でその口を開いた… 「それが――アイツ等暫くの間テーブルの上に並べた写真とか資料を見ながら  『…関東進出の為の手筈は今どんくらいまで進んどるん?』とか――  『それが…昇竜会からの邪魔で思うように事が進んでおれへんみたいや…』とか…  『組長の動向探るよう依頼しとったトコからの連絡はまだなんか。』とか  なんか色々話し合ってて…  その中で一人の男がテーブルに並べてある写真の一枚を指さしながら  『なぁ…この池泉に架かっとる橋の所で…  昇竜会の組長と一緒に写っとるこの品のよさそうな男誰や?  随分と組長と親しそうにしとるように見えるが――  コイツ探れば…何かに使える情報とか出て来るんとちゃう?』と聞いた直後    風間君が――  『ッ!――斎賀 信……なんでコイツが…、』って呟いてんのを聞いちゃってさ…」 「…!?」 「…な?気になるだろう…?  昇竜会つったら関東一帯で最大勢力を保っている指定暴力団…  …そんな暴力団の組長と信がなんで一緒に写ってる写真があるんだよ…とか――  なんで風間君たちが昇竜会だのなんだのをこんな所で話し合ってんだとか…  兎に角俺はもう――色々気になりすぎて夜しか眠れなくってさぁ…」 「………」 「その上お前が『信が刺されて入院した。』なんて言うもんだから…  俺はてっきり風間君たちが信に何かしたんじゃないかと思って  気が気じゃなかったのよ…」 「ハァ~…」と義人は深い溜息を吐くと 頬杖を突いたままタコのマリネをフォークでプツ…とぶっ刺し―― そのままパクッとマリネを頬張りながら話を続ける 「…で、だ……俺が言いたいのは――」 「…信から目を離すな。」 「そう!信が昇竜会とどんな関りがあるのか知んねーけど…  レストランで風間君たちのあんな会話聞いちまったら――  信に何かあるんじゃないかと心配になるだろう…?だからさ…」 義人がむぐむぐと頬張っていたタコのマリネをゴクンと飲み込むと―― 真剣な眼差しを仁に向ける… 「守ってやって欲しいんだよ…信の事…  お前警官だし――信のストーカーだから願ったり叶ったりだろ?」 「…一言余計だ。」 「ハハ…事実だろ?だってお前――俺の知る限りずっと信の事見てたじゃん…」 「………」 「まあ兎に角だ…風間君の件も含めて――暫くアイツから目を離さないで欲しい…  あと信にそれとな~くヤクザなんかと関わるなよって言っといてくれ。  ところで――」 「…?」 「信のヤツ……何で刺されたのか――お前知ってる?」 首を傾げる義人の前で 仁は何食わぬ顔でフォアグラのテリーヌを口へと運び―― 静かに咀嚼した後飲み込むと… 何事もなかったかのようにその口を開いた 「痴情のもつれ。」

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