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隠されると覗きたくなる…

「そう……   信に――触って欲しいんだ…   俺の気持ちが一番素直に現れるトコロを……信の手で…」 ―――これくらいなら――強請っても…いいよね…?    だって俺……いっぱい我慢したんだし… 葵は信の耳元でそう囁くと 信の手を掴み…その手をゆっくりと自身のあらぬ場所へと導いていく… 「…俺…結構待ったんだよ…?  前に信が『俺の気持ちに応える覚悟が出来ていない』って言った日から今日までさ…」 葵に導かれるまま引かれた信の手は ズボンの下から布を持ち上げる様にして膨らみを持ち始めた個所に軽く触れ… 「ッ、」 信は思わずその手を引こうとするが―― 「…ダメ。」 信の手を掴む葵に手にそれを(はば)まれ… 葵はもう片方の手で信の後頭部を軽く押さえながら、なおも信の耳元で囁く 「…“今日も”――  俺は信の“覚悟が出来ていない”という気持ちを尊重して…  色々と諦めたんだから…  これくらいのお願いは――聞いてくれてもいいじゃない…」 「ッ…葵…」 信の手の甲に自身の掌を重ねながら… 布越しに膨らみ…熱を持ち始めている場所を信の手に押し付ける 「ッホラ……俺のここ…、  もうこんなになってるの…、ッ、…わかるでしょ…?」 「ッ…」 「ハァ…」と…熱い吐息と共に信の耳元をくすぐりながら囁かれたその言葉は 信の欲望を駆り立てるのには十分すぎて… ―――葵……ホントお前って奴は…ッ、 信はコクン…と喉を鳴らし… 葵と同じように自身の中心でも熱を持ち始めたその欲望を堪えながら なんとか口を開く 「葵…、ッ、その……な…?」 「“それもナシ”って言うのもナシで。  信だって本当は――触れたいんでしょ…?俺に…」 「ッ、」 互いに密着しているが故に… 信の手を握っている葵の手にも時折硬くなりかけている信の熱が当たり… 葵はそれを感じてフッ…と微笑む 「…良かった。…興奮しているのが――俺だけじゃなくて…」 「………」 「…ねぇ…信…お互いに触りっこしようよ…  お風呂でさ…」 「ッ…おまっ、」 「…“お互いに高め合うのが大事”なんでしょ…?  だったら――丁度いいじゃん…お互いの気持ちを確かめ合う上でもさ…  お互いに触り合おうよ…大事なトコロを…  そうすれば俺の不安だって……少しは解消されるし…」 「ッ…」 それを言われてしまっては――信も返す言葉がなくて… ―――ッ…俺だって…    出来る事ならお前の不安を今すぐにでも解消してやりたいが――    しかし…、    風呂は不味い……風呂はマズイんだよ…、ッ、 「さっ…触るだけだったら――  何も風呂になんか入らなくても…  お互い服を着たままこうして触り合うだけじゃダメか…?」 「…汚いよ?それに服も汚れるし…」 ―――うわーお…ごもっとも~… 「それに俺は――  信の肌に直に触れたい……信の熱を直に感じたいんだ…  ―――だめ…?」 「う”っ…」 潤んだ瞳に縋るように見つめられ… もはや信にはそれを拒否するという選択肢は残ってはおらず… ―――万事休すとはこの事か… 信の視線がチラリと自分の左肩の方に移る… ―――葵には……隠し通しておきたかったんだけどな…    俺の――“裏の顔”… 信がスッ…と瞳を閉じ… 小さく息を吐きながら肩の力を軽く抜く ―――もし葵が俺の隠しているこの左肩の刺青を見てしまったら…    まず間違いなく怯えさせてしまうだろうし――    下手したら……俺の元から逃げ出してしまうかも…    俺の裏の顔を知って…    俺はそれが怖い…    葵が――俺の元を去ってしまうかもしれないという事が何よりも―― 「のぼる…?」 「ッ…」 信の後頭部の髪を(いじ)って遊んでいた葵の手がスルリと信の頬に触れ… 信が弾かれたように葵の方を見ると―― 葵が潤んだ瞳のまま不思議そうに信の事を見返していて… 「…どーしたの…?」 「ッ葵……その、ッ、…風呂は――」 「…信ってさ……恥ずかしがり屋さんだよね。」 「――え…?」 思いがけない葵の言葉に… 信は一瞬ピキッ…と動きを止める 「だってさぁ~…信って絶対に俺の前では服を脱ぎたがらないじゃん。」 「ッそれは――」 「ひょっとして――  信の左肩にある刺青と――何か関係がある…?」 「……………………は?」 ―――今なんて…? 葵の口から出た言葉に信は脳の処理が追い付かづ… まさに狐につままれた様な顔をして信は葵の顔をポカンと見つめる すると信の頬に触れていた葵の手はスー…と信の頬をなぞり… そのまま首筋を辿ってキッチリと閉じられている信のワイシャツの第一ボタンに辿り着くと 葵はそのボタンを弄りながら口を開き… 「だからぁ~…信は肩の刺青を俺に見られたくなくて…  だから俺の前では服を脱ぎたがらないのかなって…」 「………ちょっと待て葵。」 「…ん?」 「何でお前――俺の刺青の事を知って…」 「そりゃあ――覗いたから…」 「…………は?」 「っだって…、ッ、信が余りにも俺と一緒に風呂に入りたがらないから  つい気になって…  だから俺――  我慢出来なくてこっそりと信のお風呂を覗いた事があったのっ!悪いっ!?」 「…何で逆切れしてんだよ…」

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