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あの日、あの時の選択で…
「ッ…葵…、」
「…脱いで……信…
まさか服着たまんまでお風呂入るワケにもいかないでしょ…?」
脱衣所で…
葵がクスクスと笑いながら信の唇を軽く啄 み…
両手で信の着ている上着を肩からスルリと脱がせると
上着は何の抵抗もなくパサッ…と床に落ち…
次いで葵の手はキッチリと閉じられている信のワイシャツの第一ボタンを弄り出す…
すると信の手がそんな葵の手をやんわりと掴み――
「葵…、ッ、やっぱり今日は――」
「ダ~メ。“それもナシって言うのもナシで”って言ったよね?
ホント…往生際が悪過ぎるよ?信…」
「ッ…」
未だに躊躇いを見せる信に対し…
葵は信に微笑みを向けながら
プツ…と信の着ているワイシャツのボタンを一つ外す…
「…きんちょーしてる…?」
「…そりゃあ…」
プツ…とまた一つ…
葵が信のボタンを外す
「フフッ…大丈夫だよ信…
ただお互いに触りっこするだけだよ…?だから緊張しないで…ね?」
プツ…プツ…と葵が微笑みながら信のボタンを外していき――
そしていよいよ葵の手が最後のボタンに差し掛かったその時…
「ッ待て…、」
信の手が再び葵の手首を掴んでそれを止め――
「…やっぱり駄目だ葵…」
「信…」
信の表情に苦渋が滲む…
「さっきも言ったが……俺はお前の事が大事なんだ…
そんなお前がヤクザの俺なんかと深く関わって…
もし万が一にでも危険な目にでも合わせちまったら俺は――」
「…そんな事……今更過ぎるよ…
大体自分がヤクザだという事が後ろめたいと言うのなら…
じゃあ何で信はあの日――俺の事を拾ったりなんかしたの…?」
「ッそれは――」
ビクッとしながら葵の手首を掴んだ信の手が離れ…
葵がフッ…と微笑みながら最後のボタンをプツ…と外し終えると
そのまま開 けた信のワイシャツの隙間からスルリと両手を滑り込ませ…
信の胸から肩にかけ…その滑らかな肌の感触を楽しむかのように
ゆっくりと両手を這わせていく…
「…言わなくていいよ…
理由が何であれ……俺にとって信がヤクザだったとかそんな事――
今となってはどーだっていい事なんだし…」
「葵…」
「だって俺にとって信は――
あの日俺の事を救ってくれた…
ただ一人の人物である事になんら変わりはないのだから…」
ワイシャツの下の肌を滑るように這っていた葵の両手が信の両肩へと辿り着き…
その両手を軽く外側に払うようにしてスッ…と信の肩を払うと――
信の着ていたワイシャツは肩から呆気なく滑り落ち…
その下からは見事に鍛えぬかれ…
左胸に赤い花が咲き誇る信の上半身が露わとなる…
すると葵は目を細め…
その咲き誇る赤い花に手を這わせると
何処か切な気な笑みを浮かべながらその口を開いた
「ねぇのぼる……知ってた…?」
「…何が…?」
「もし信があの日――俺の事を助けていなかったら…
俺は今ここに――いなかったって事を…」
「ッ…!」
葵の口から出たその言葉に…
信は何故か全身から血の気が一気にサァァー…と引き――
その顔色を青くしながら葵の事を見つめる…
すると葵はそんな信に笑みを返しながら静かに言葉を続け…
「…あの日…信が俺の事を見つけていなかったら…助けてくれていなかったら…
俺はあの時電車に轢かれ――
今ここにはいなかった…」
「ッ、」
「でも信が俺の事を助けてくれたお陰で――
俺は今…ここにいる。
信の隣に…
そんな俺の事を救ってくれた信がヤクザで――
危険な目に遭うかもしれないからといって今更怯 むと思う…?
ましてや俺は今その人の事を…
どうしようもないくらい好きだって言うのに…?」
「………」
信の胸から肩にかけ咲き乱れる赤い花を触っていた葵の手が
不意に肌をツゥ~…っと滑るようになぞりながら信の割れた腹筋に触れ…
そのままゆっくりと下腹部をくすぐりながら信の穿いているスラックスに辿り着くと
そのベルトに手をかける…
すると信の手がその手を止め――
「……俺だけ脱がす気か…?」
「…だめ?」
「…そういうプレイも悪かないが――
今日はお互いに高め合うんだろ…?だったら俺だけ脱ぐのは不公平ってもんだ…
ちゃんとお前も脱がないと…」
そう言うと今度は信から葵にキスをし――
まずは葵が上に羽織っていたロングチェスターコートをスルリと脱がせる…
「…やっとその気になった…?」
「…勘違いするな。今日は触るだけだ。」
「フフッ…強がっちゃってぇ~…
触るだけで……満足できるといいね。」
「…言ってろ。」
信は優しい笑みを葵に向けながら、再び葵の唇を自身の唇で深く塞ぐと――
葵の着ているセーターの下に、その手を滑り込ませた…
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