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見つけた後は…
バスルームに入った信は早速クリスタル製のコックを回し…
頭から温かいシャワーを浴びると――
昂る気持ちを落ち着かせるために壁に両手をつき…
静かに瞼を閉じながら大きく息を吐き出した…
―――まったく…葵の奴……朝っぱらから煽ってくれる…
バスローブが完全に肌蹴…
透き通るような白い肌を惜しげもなく晒しながら自分の上に跨り…
大人の持つ艶 やかさと
子供の持つ無邪気さを併 せ持った笑みを浮かべながら
自分の事を見下ろす葵の表情と…
自分の股間に押し当てられた陶器のように滑らかな葵の尻の感触を思い出し――
「ッ、」
折角治まりかけていた下半身に再び熱が集まるのを感じ…
信は慌てて水に濡れた犬みたいに頭をフルフルと振り
勢いよく自分の顔を両手でパシンッ!と叩きながらその顔を覆うと――
やがて目の周りや頬の筋肉を解す様にして軽く掌で揉みながらそのまま上を向き…
深い溜息と共に顔を覆っていた両手をゆっくりと退け――
目を瞑ったまま降り注ぐシャワーを顔面で浴びる…
―――それにしても…あの無邪気さが元々の葵の性格なのかは知らんが――
18の男があそこまで甘え上手だと……色々と不安になってくるな…
もっとも――
俺にだけに見せてくれる顔なら……悪い気はしないのだが…
出会った頃のツンケンとした――
どこか陰鬱とした暗い表情は今はもう見る影もなく…
代わりに水族館で見せた明るく無邪気に微笑む葵の顔が脳裏を過り――
信は瞼の裏に浮かんだその笑顔にフッ…と微笑む
―――随分と…変わったよな。葵のヤツ…
このままずっと――葵には俺の傍で笑っていて欲しいものなんだが…
そう思った矢先――
信の瞼の裏で微笑む葵の周りに突如として黒い影が現れ…
その影は信に向けて微笑む葵に纏わりつくと
徐々に信の目の前から葵の姿を覆い隠していく…
「…ッ、」
その光景に信は眉を顰 め…忌々し気に「チッ…」と舌打ちをすると――
信は閉じていた瞼をゆっくりと開いた…
―――その為にもまずは――
目下 の懸念材料でもある葵の父親をどうにかしないとな…
これ以上……葵の笑顔を曇らせない為にも…
信はシャワーのコックをキュッと捻り――
濡れた髪をザッとかき上げると、近くのバスラックからバスタオルを一枚引っ張り…
濡れた顔や髪を拭きながら脱衣所へと移動する
―――俺がすべきことはもう分かっている…
葵の父親を知るのに一番手っ取り早い方法は――
葵の身元を調べる事…
そしてその為の一番の近道は――
葵の通っていた高校…
沈丁花 高校のサーバーにアクセスし――
葵の個人情報を探ればいい…
なに…高校のサーバーなんて大したセキュリティでもないから
簡単に侵入できるだろう…
スラックスを穿き、信は上半身裸のままで洗面台の前に立つと
髪を乾かしながら鏡に映る自分の顔を見つめる
―――ただ問題はその後だ…
葵の父親を突き止めた後…
どーやってその父親から葵を遠ざけ――守るか。……だ。
普通に考えたら相手の弱みを握って
『二度と葵に近寄るな。関わるな。』と脅すのが一番効果的なのだろうが――
だがしかし…
鏡に映る信の顔が険しくなる
―――俺の見聞きした事件の場合…
自分の子供や身内の人間に対して暴力などを振るうヤツは大抵――
外面だけは良いからな。
醜聞を隠す為に…
自分の子供を虐待していた親が実はPTAの役員だったり
地元の自治会などの活動に積極的に参加したりして――
周りからは“良い人だった”と思われているのはよくある話で…
―――葵の父親もまた――“そういうタイプの人間”なら…厄介だぞ。
そういうタイプのヤツは大抵ボロを出さないよう…上手く立ち回る上に
もし万が一に備え…
用意周到に自分の身の回りの醜聞を握りつぶしている可能性があるからな…
今更父親の身辺を探ってみたところで――
果たして弱みらしい弱みを見つけられるかどうか…
髪を乾かし終え…信は洗面台に置いておいた眼鏡をスッ…とかけると
神妙な面持ちで鏡に映った自分の顔を見つめる…
―――それに例え弱みを握る事が出来たとしても――
葵の父親がコチラの思惑通り葵を諦めるかどうか…
弱みの度合いにもよるが…
人でも殺してない限り自分の息子を諦めるなんてそうそう――
信の視界にふと…葵が昨日散々触れた自分の刺青が目に入る…
「………あ。」
すると何かに気がついた信が洗面台の縁に両手を乗せ…
クツクツと肩を震わせながら声を押し殺して笑うと
やがて信は鏡の中の自分に向け…
冷たい笑みをうかべながら呟いた…
「…そうだ……俺は何を葵の父親に対して…
脅すなんて生易 しいやり方で穏便に済まそうとしているんだ…?
相手は葵に自殺を決意させるほどに追い詰め苦しめた…クソみたいなヤツだぞ…?
そんなヤツに今更――
かけてやる慈悲なんてないだろ…」
鏡の中に映る信の瞳が鋭く光る…
「…もし……葵の父親がコチラの“提案”を飲まなかった場合は構う事は無い…
葵の父親には――
今後二度と葵に関われないよう…
消えてもらえばいい…
この世からな。」
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